素直な心とは「寛容にして私心なき心、広く人の教えを受ける心、分を楽しむ心」と定義づけられており、幸之助は1970年代の新聞インタビューに「商人は聖なる仕事」として、こう答えている。
「自分が儲けるために商売するんやない。社会的に必要があるために、商売ができるわけです。そういう使命感というものをはっきりつかんでいないと、商売にならんと思います。物を売って儲けさせてもらうというのは第二のことで、第一は、より必要なものを必要な人へ運ぶこと。これは神さんの仕事で、それほど聖なる仕事です。そういう聖なる仕事をしているんだという自覚と意志、そしてさせてもらっているという感謝と、この二つをはっきりと持っていないとあかんわけです」
今やパナソニックは、住宅設備や自動車部品・法人向けソリューションなど家電以外の事業が売り上げの4分の3を占める。そこにも「会社の活動目的は社会の役に立つこと」という創業以来の理念が息づく。
幸之助は「ものをつくる前に人をつくる」と生涯を通じて人材育成に注力してきた。パナソニックの新入社員には入社後に幸之助の著書が配られ、「幸之助イズム」が叩き込まれる。さらに幹部へと昇進するたびに研修が行なわれ、数々の名言が血となり肉となるかのように体に染みついていく。同社の若手社員から「この会社ほど世の中のことを考えている会社はない」との声が聞こえてくるのも、あながち建前ではないだろう。
《100周年の節目に歴史的商品が復刻発売》
パナソニックが今年6月20日に発売するのが、1927年に同社が初めて「ナショナル」の商標を用いた角型ランプの現代版だ。コンパクトでレトロなデザインを踏襲した現代版の『乾電池エボルタNEO付き 強力マルチライト』は強力な明るさが特徴で、LEDを搭載し、3つの照射モードで前方・足元・ダブル照射も可能にしている。
オリジナルの角型ランプは製品の実用性に確信を持った幸之助が発売に際して、1万個を販売店に無料提供。この思い切った試みが見事成功し、商品は後に大ヒット、「ナショナル」の名を世に轟かせたのである。
文/編集部
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