■将来どこを目指すのか
ちょっと古い日本企業のようですが、うちは年に一回、自由参加の社員旅行があります。河口湖とかに一泊してバーベキューを楽しんで。外資系の企業に転職して給料が上がったといっても、高級車のジャガーやランドローバーを購入できるほどの収入はない。この日だけは、会社がマーケティング活動のために所有しているジャガーとランドローバーのハンドルを握り、運転することができます。この社員旅行では社長ともフランクに、深い話をすることができるのです。43才の社長、マグナス・ハンソンはスウェーデン人と日本人のハーフでスウェーデンのサーブ社に在籍していたこともある。いろんな国でビジネスを展開してきた人です。
「どうして社長になれたのですか?」「若い頃、どんなことを思って、仕事に取り組んだんですか?」そんな質問をすると、
「キミが将来どうしたいのかによる」と。実は僕には目標があってそれを社長に告げると、「まず重要なのは自分の仕事のスキルを、キミならファイナンスの知識を伸ばしなさい。自の強みを持つ。スペシャリストの力があって、各専門のことを理解できるゼネラリストを目指していく」そんなアドバイスをもらいました。僕の目標とはーー。
ずっといるかどうかはわかりませんが、この会社に愛着心はあります。昨年の東京モーターショーでのことです。前の会社は日本の自動車部品関係の大手サプライヤーでしたから、前職の知り合いと会場で出会い、飲みに行ったんですよ。
「誰々は相変わらずガミガミうるせえよ」「あの上司、酒飲んで説教するクセは治んねえな」「給料が安いよ」等々の類の話が多かった。愚痴を言うなら、さっさと会社を辞めればいいのにと思ったんですけど。
前の会社には戻りたくないとつくづく思いましたね。この会社でやることは一つ、僕らは車の売らないと給料がもらえないという危機感で社員は動いていますから、大企業みたいにのんびりとしていられない。
「将来どうしたいのか」ハンソン社長の問いに、僕の目標は「チャンスがあれば、社長のポジションにまで行きたい」と、応えたんです。できれば50才前に理想とするポジションに付いていたい。
スペシャリストの力をもって、ゼネラリストを目指す。そしてもう一つ社長になるための重要な条件としてマグナス・ハンソンは、
「みんなとの調和を取ることが大事だ」と。
社長を目指すためには、人間的な成長も必須の条件です。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama