■「利益の独占」を否定するゲーム
この7つの秘宝と対極するボードゲームは、『モノポリー』である。
モノポリーはその名の通り、「独占」を目指すゲームだ。土地や公共交通機関、電気会社や水道会社までも買い占め、レンタル料という名目で他のプレイヤーから搾取し、破産に追い込む。よく考えたら、恐ろしく残酷な内容だ。
筆者は7つの秘宝でハンターを独占したが、これはモノポリーに置き換えれば土地の独占だ。しかし、問題はその先である。モノポリーは土地から得られる利益を独占し、損失を他人に押し付けるものだが、7つの秘宝はキャラの独占から得た利益はいずれ他人に分配しなければならない。それをしなければクリアできないようになっている。
これが7つの習慣という書籍の「核」である。
各人が利益を得ることに積極的な姿勢を見せつつ、実際に獲得した利益は同業他社にも供給する。これはワンサイドゲームの否定であり、同時にウィンウィンを目指す発想だ。
だが一方で、この本の著者は宗教上の思想からペンを走らせたという事実も確かにある。
■「いいとこ取り」の能力
「発想のいいとこ取り」は日本人のお家芸である。
仏教、儒教、ヒンズー教、キリスト教などの宗教の戒律を吟味し、自分たちが賛同できる部分だけを抽出してまとめる。しかもその際、宗教色は完全に取り除く。
クリスチャンというわけではなく、これからも教会の洗礼を受けるつもりはないが、イエスの生誕と最期を心のどこかに留めている。一方で、休日は御朱印帳を手に寺社仏閣を回っている。しかしやはり、どこかの宗派の檀家というわけでもない。それが平均的な日本人だ。
スティーブン・リチャーズ・コヴィーは、まさか自分の本がこのようなボードゲームになるとは想像していなかったはずだ。彼は自身の信仰に基づいてこの本を書いたはずだが、日本人はそれを材料に「遊びの道具」を作ってしまった。それでいながら、原作者へのリスペクトは忘れない。彼が伝えたかったことを、ちゃんとエッセンスに加えている。
そんな日本人にとっての唯一絶対の戒律は「笑い」である。笑いを踏まえながら、世界のあらゆる事柄を学ぶ能力に秀でているのだ。
コヴィーがすでに故人であることが悔やまれる。今も存命ならば、7つの秘宝というゲームに対してどのような反応を示していただろうか。
【参考】
【日本初】『7つの習慣』がRPGに!世界3000万部のベストセラーを冒険しよう!-Makuake
取材・文/澤田真一