では、セレナe-POWERのパワートレーンは、ノートのe-POWERとどう違うのか?じつはノートとセレナのe-POWER同士では車重が540kgも違うため(S-HV比較では80kg前後重い)、リーフとも同じEM57と呼ばれるモーター出力を25%UPの320Nm、100kwに。バッテリー容量を20%UPの1.8kWhに。そして1.2Lエンジンの出力を7%UPの84psに増強しオイルクーラーを追加した専用設計となっている。
これで素早い加速力、バッテリー走行距離の拡大、高負荷対応が実現し、可能になったのだ。さらにノートe-POWERにない機能としてマナーモード、チャージモードを新装備。マナーモードとは深夜の住宅街の走行などで便利な、強制的にモーター走行させるエンジンがかかりにくい制御で、それと連動するのが事前にエンジンで発電し、バッテリーをためておくチャージモードである。もちろん室内空間の大きさから、電気自動車にとってつらい暖房出力性能も向上させているという。
ちなみにバッテリーが90%充電状態でのモーター(EV)走行距離は最大約2.7キロ。また、1.2Lエンジンの出力UPは例えばバッテリー残量が少ない場面で急勾配の箱根ターンパイクを登り切れる性能要件で決められたという。
セレナe-POWERが、ミニバンという多人数乗用車にまったく新しい世界、快適性能をもたらしてくれた最大のポイントは、バワーユニットそのものだけではない。電気自動車の新しいカタチがもたらす、モーター走行によるウルトラスムーズな加速性能、電気自動車ならではの静粛性(フロントラミネートウインドーガラス、日産初の4層センターフロアカーペットなど25アイテムにおよぶ遮音材を追加。エンジンが始動したときのノイズレベルはノートe-POWER比20%減)、そしてクラストップの26.2km/Lの燃費性能はもちろんだが、ノート人気を一気に押し上げた、アクセルペダル操作だけで加減速、停止まで行える「ワンペダル」機能に尽きるのではないか。
ピュアEVでもブレーキングはドライバーのペダル操作にゆだねられ、ドライバーが下手にブレーキペダルを踏めば不快な前後Gが発生。特に重心の高いミニバンであれば乗員の上半身、頭は大きく揺れ、不快なだけでなく、車酔い、疲労感に直結。しかし、ノーマル/エコ/スマート(S)から選べるドライブモードのエコ/(S)スマートモードで機能するアクセルオフによるワンペダル操作なら、下手にブレーキを踏まれるよりはるかにスムーズにジェントルに減速してくれるのだ(ノートe-POWERと同じ最大0.15Gの減速力が得られる/リーフは最大0.2G)。
しかもミニバンの重心の高さに配慮したと思われる、約60キロ以上になると減速Gを0.1G以下に抑えてくれるノートにない専用制御まで盛り込まれているから、速度域の高い高速走行でより自然な減速力を発揮してくれるわけである。
そのため、ワンペダル機能を使えば、終始、誰もがブレーキングの達人になったかのようなスムーズさ極まる減速操作を行え、実際に後席に乗っていても、減速による不快感は大幅に減少する。
しかも、特に信号の多い市街地でブレーキを踏む機会が70%減にもなるという(ノートe-POWERのデータ)、ワンペダル機能は、長時間、長距離ドライブにおいても、同一車線半自動運転のプロパイロット(上級グレードにのみオプションというのが残念だが)とともに、ドライバーの疲労度低減に直結することを確認済みだ。