02:追従性向上! 新型パンタグラフ
車外から電気を取り入れるために必須な屋根上のパンタグラフ。25000Vの交流電流が流れる架線とパンタグラフを接触させて走行しているわけだが、新幹線の場合これを高速下で行わなければならない。しかも、パンタグラフが架線から一瞬離れかけると「アーク」と呼ばれる火花が散ってしまう。
そこで、従来1枚の板状だった「すり板」(架線と接触する部品)を、いくつかのブロックに分け、架線の位置に合わせてたわむ「たわみ式すり板」に改良。これにより、集電性能向上とすり板の長寿命化を図った。また、パンタグラフ自体を支える部品も3本あったものが2本となり、1台のパンタグラフあたり約50㎏の軽量化を実現。
ちなみにN700SはN700Aと同様に16両編成中パンタグラフは2台搭載されているが、今の技術であれば編成中パンタグラフは1台のみでも設計できそうですが……と、車両課の野﨑係長に尋ねると「トラブルなどのリスクを考えるとパンタグラフは編成中2台の設置が最低数と考えています」と教えてくれた。東海道新幹線を駆け抜けた初代0系は16両編成でパンタグラフは8台設置されていたが、設置台数的にはすでに完成領域に達したといえる。
2台搭載されているパンタグラフ。黄色い部分には細かい穴があけられており、静音性も高めている。
架線と接触するすり板を分割し、架線追従性を向上したN700Sの「たわみ式すり板」。
03:4両1ユニット! 様々な編成長に対応
いくつもの車両が連なる鉄道の編成だが実は全ての車両が同じ機器を積んでいるわけではなく、走行に必要な機器を複数車両に分担して積んでいることが多い。これを「ユニット」と呼び、車両の組成はこの「ユニット」単位が基本となる。
近年、諸外国でも高速鉄道の建設が検討され、JR東海としても半世紀以上にわたり培った新幹線の技術を輸出したいところだが、実際のところ東海道新幹線のように「16両編成1323席」の高速鉄道を高頻度に運行する必要がないケースも多い。そこで従来、搭載している機器別に8種類の車両を組み合わせていたユニットをN700Sでは4種類1ユニットに最適化。これにより、8両編成や12両編成といった両数のアレンジが可能になり、様々な編成長対応できるようになった。実はこれができたのも、床下機器の小型・軽量化が大きく貢献している。
ちょっと待って! 16両編成じゃなくても走れるということは気になるのがリニア中央新幹線の存在。N700Sは2020年度に営業運転を開始する見込みだが、その7年後の2027年にはリニア中央新幹線が品川~名古屋間で先行開業予定。当然、これまで東海道新幹線を利用してきたユーザーの流れも変わるだろう。短編成化が可能というのはリニアが開業した後の短編成化を計画しているのではというのは当然の疑問だが、上野雅之新幹線事業本部副本部長は「あくまでも短編成への対応は海外向けの〝売り〟として考えており、東海道新幹線での短編成化は考えていない」と話した。
ユニットのイメージ図。走行に必要な車両を組み合わせて様々な編成長を構成できる。
(画像提供:JR東海)