■いったん管理職になると、怖いものがない
中小企業では管理職の数だけ、社長がいるような態勢になる。本当の社長の前ではおとなしくなるが、自分が仕切る部署に戻ると、管理職とは思えないような大胆な言動をとる傾向がある。人事異動や配置転換がほとんどなく、同世代での昇格をめぐるし烈な競争は少なく、降格もほとんどない。いったん管理職になると、怖いものがない。
部下で生意気な社員がいるならば、人事評価で低くつけたり、他部署で追い出しをする。中小企業では、人事異動や配置転換は大企業のように整然と毎年行われるわけではない。異動になった社員は社内で浮いた存在になり、辞めていくことが多い。結果として、追い出した上司はますます自分の力をかいかぶり、怖いものがないと錯覚する。こういう会社で、部下を育成することに真剣に取り組む人はしだいに減っていく。
最後に…。大企業を「終身雇用・年功序列」、中小企業を「実力主義」と今なお、見なす有識者がいる。このとらえ方は私が知る限り、40~50年以上前からある。果たして中小企業を「実力主義」と言いきることができるのかどうか…。もっと広い視野で事実に即して考えなおすことが必要なのではないだろうか。そのような思いもあり、前回と今回で連続して取り上げてみた。
文/吉田典史
■連載/あるあるビジネス処方箋