■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記
僕は中古レコードを探しに、70年代ロックの品揃えが豊富な、ディスクユニオン新宿ロックレコードストアによく行く。もちろん、他のユニオンにも時々立ち寄る。「山下達郎特集」の『BRUTUS』が神保町・三省堂書店に山積みされていた2月上旬、久しぶりに神保町ユニオンを覗き、山下達郎がプロ・デビューを遂げたバンド、シュガー・ベイブの『SONGS』オリジナル盤(マト1のほぼ同義語)に遭遇した。
帯付きのコンディションB(悪くない~良好の状態。ジャケットと帯は目視で、盤は目視と試聴で状態を確認する。試聴可能時間は数分ほどだが、家で聴いてノイズがひどい、あるいは針飛びするといった場合は、レシートがあれば原則返品可能。僕はお茶の水ユニオンで、ピンク・フロイド『おせっかい』のノイズがひどく返品したことがある)で、28000円だ。
『SONGS』は1975年にリリースされ、定価は2300円。約40年を経て、10倍強のプライスだ。高いといえば高いが、マト1の世界では珍しくはない。僕は邦楽派ではないが『SONGS』は大好きなアルバムで、CDも2015年発売の山下達郎によるリマスターLPも購入した。だから偶然のオリジナル盤との出会いに、購入意欲がむずむずと湧いてきた。
さて、マト1とは最初にプレスされたレコードの呼称(僕の過去記事参照)で、原則、イギリス盤ならrunout(レコード中央のラベル外側の溝のないエリア)にプレスされた数字で、アメリカ盤ならアルファベットで、マト1かどうかを判断できる。ところが日本盤になると、そのようなわかりやすい見分け方はないようだ(僕が知らないだけかもしれないが)。とはいえ、いくつか指針はある。
たとえばレインボーの『虹を翔ける覇者』なら、帯に「初回プレス分に限り、リッチーのカラー・ポスターがジャケット内に入っています」と書かれているので、この帯付きならオリジナル盤と判断できる。荒井由実の『ひこうき雲』なら初回の帯は銀色、次は黒なので見分けが付く。この通称銀帯は、ものすごく音がいい。
数千円で買えるのでお勧めだ。ただし初回中の初回、ALFA盤(ジャケット中央のHIKO-KIGUMOという文字の上に、ジャケット上のどの文字よりも大きくALFAと書かれている)と呼ばれる激レア盤があり、録音そのものは銀帯と同じという説があるものの、こちらは10万円級で取引されている。ALFA盤こそ初回、銀帯は2ndプレスとする捉え方もあるようだ。