都営新宿線開業から40年、初代車両の10-000形(「いちまんがた」と読む)が2018年2月11日をもって、47年の歴史に幕を閉じた。その生涯を御紹介しよう。
■東京都交通局としては、画期的な車両だった
試作車の前面デザインは、都営三田線初代車両の6000形に準じた(提供:東京都交通局)。
車両番号一の位の「3」「4」は、欠番のまま現役を終えた(提供:東京都交通局)。
10-000形は1971年11月に試作車4両が登場し、当時は都営三田線に配属された。車両形式のハイフンの前の「10」は、東京都市計画高速鉄道網の10 号線(都営新宿線)を意味し、次の2 ケタは編成番号、最後の1ケタは車号を表している。東京都交通局によると、ハイフンを入れることで、号線がわかりやすい標記にしたという。
試作車の車体は6000形と同じセミステンレスながら、都営地下鉄初となる様々なモノを装備。実用化に向けて、長期試験を行なうことになった。
(1)電機子チョッパ制御
営団地下鉄(現・東京メトロ)6000系で実用化された電機子チョッパ制御を導入。走行時の消費電力や床下機器からの排熱をそれぞれ低減する。いわば省エネ車両のさきがけだ。当時、10-000形は「電動車6両+付随車4両=10両編成」を想定していた。
(2)ワンハンドルマスコン
力行とブレーキをひとつにまとめたもの。これを世界で初めて採用したのは東京急行電鉄8000系で、東京都交通局は追随した格好となる。
(3)ATO(自動列車運転装置)
都営新宿線の保安装置は、車内信号方式のATC(自動列車制御装置)を計画しており、ATOを併せることで、運転士の熟練度の軽減、労務緩和による保安度の向上などが期待された。
(4)駅名表示器
一部の乗降用ドア上に列車種別、運行区間、停車駅名を案内する駅名表示器を取り付けた。停車駅は豆電球で点灯し、停車済みの駅を順次消灯する仕組みだった。
(5)冷房装置
国内の地下鉄電車では、初めて搭載された。先述の電機子チョッパ制御の採用により、トンネル内の車両排熱が低減されたほか、生活水準の向上で冷房に対するニーズが高まり、試験的に取りつけられたのだ。