■レジリエンス・コンピテンシー養成に必要な「18つのスキル」
レジリエンスを高めるためには、この6つのレジリエンス・コンピテンシーを養成すればいいということだ。そのために効果があるのが、「それぞれのコンピテンシーに対応したレジリエンスのスキルを習得すること」(宇野氏)であるという。
「ペン・レジリエンシー・プログラムでは、全部で18あるレジリエンス・スキルを習得しながら、先の6つのコンピテンシーを身につけていきます。その18のスキルのうち、図1にある7つのスキルが、認知面や感情面、行動面の適応能力を高めるための素地作りに有効であることが解明されています。まずはこの7つのスキルから習得を始めます」
図1 7つのレジリエンス・スキル
引用:『レジリエンスの教科書』(草思社)、『逆境・試練を乗り越える!レジリエンス・トレーニング入門』(電波社)
宇野氏によると、この図のピラミッドを支える底辺が最も重要で、感情をマネジメントするには思考とセットで考える訓練が必要だという。これらのスキルを身につけるために、次の順番で7つのワークを実践していくという。
ワーク1 :「ABC分析」で自分を知る
ワーク2 :「思考のワナ」から抜け出す
ワーク3 :「氷山思考」を探り当てる
ワーク4 :自分の「思い込み」に挑む
ワーク5 :未来の「シナリオ」を書き直す
ワーク6 :一瞬で心を静める「エクササイズ」
ワーク7: 窮地で自分の思考に反論する
引用:『折れない心のつくりかた』(すばる舎)
そして宇野氏は次のように注意を促す。「ただし、レジリエンス・トレーニングの目的はコンピテンシーを高めることであって、スキルの習得はあくまでもそのための手段であるということに注意してください」
まとめると、レジリエンスを高めるためには、6つのコンピテンシーを養成する必要があり、それを養成するためにまずは素地となる7つのスキルを身につけることが有効だということだ。
7つのスキルの身につけ方は、『レジリエンスの教科書』(草思社)、『折れない心のつくりかた』(すばる舎)、『逆境・試練を乗り越える!レジリエンス・トレーニング入門』(電波社)で詳しく、分かりやすく解説されているため、興味が湧いたなら、ぜひ参照したい。
最後に、宇野氏にレジリエンス・トレーニングをビジネスパーソンが行う意義を聞いた。
「よく言われる、ストレス過多や、VUCA(Volatility=変動、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)に象徴される先行き不透明な状況などは、何も現代のビジネスパーソンに限られた現象ではありません。むしろ、今の時代に必要なのは、AI(人工知能)をはじめとするテクノロジーの進歩に伴う高いソーシャルスキルであったり、人生100年時代を踏まえた第二、第三のキャリア形成力などでしょう。レジリエンスは誰もが生まれ持った能力ですが、然るべきトレーニングによってその能力を正しく伸ばすことができます」
取材協力
宇野カオリ氏
日本ポジティブ心理学協会(JPPA)代表理事。
ポジティブ心理学創始の地、米・ペンシルベニア大学大学院で学位を修得し、現在、本邦でポジティブ心理学の教育普及に携わる。『レジリエンスの教科書』(草思社)、『折れない心のつくりかた』(すばる舎)、『逆境・試練を乗り越える!レジリエンス・トレーニング入門』(電波社)をはじめ、レジリエンスやポジティブ心理学に関する著書・翻訳書多数。米国留学中、世界最大規模のレジリエンス・トレーニングに従事し、日本にその概念や手法を導入した。筑波大学人間系研究員。跡見学園女子大学助教。兵庫県芦屋市出身。
取材・文/石原亜香利