ある程度の高度を確保した後、機首を万年雪が見える険しい山の方角へ向けた。騒音がわずらわしくて、振動も大きいだろうと思っていたが、実はそうでもなかった。騒音や振動は気にならず、思いの外居心地の良い飛行ができた。すでにヘリコプターは谷間を抜けて、雪に覆われた峰に近づいて行る。着陸するつもりなのだ。
雪の上に着陸したヘリコプターは、エンジンを切らずアイドリング状態で待機してくれた。そのまま頂上の地を確かめられるよう、筆者たちに時間を与えてくれたのだ。ヘリコプターから降りて周辺を見回した。この高い山頂までわずか数分で登ったことも面白いが、まだ秋なのにポフポフと雪道を歩くのも奇妙な経験だった。まるで時空を超えて異世界へ落ちた気分というべきか……。