もうひと意見、「ULTRADISK ONE-STEP」に匹敵するほど音のいい、従来のプレス方法で作られたレコードが存在するのだ。まずはロスアンゼルスのジャズ・カルテット、ザL.A.4の『なき王女のためのパヴァーヌ』。ダイレクト・カッティング録音のスタジオ・ライブで、信じられないほどの臨場感。ダイレクト・カッティングとは、テープに録音してカッティングするのではなく、生演奏をそのままその場でカッティングする。プレーにミスが出たら、一巻の終わりだ。テープに録音するという工程(=劣化)がないので音は抜群にいいが、ラッカー盤は1枚しか作りようがなく、生産数は限られる。
大滝詠一の12インチシングル「バチェラー・ガールズ」も凄い。市販されたシングルは7インチだが、プロモーション用に非売品の12インチも制作された。そもそも録音がいい上に、45回転12インチ、さらに盤は混じり物のない透明仕様と、より良い音をというこだわりの賜物だろう。音場の広がりに、圧倒される。この2枚は、わがロックとオーディオの師にしてマイ電柱の持ち主、音楽プロデューサーの岩田由記夫さんと僕で開催している、マト1をメインに録音のいいアナログを聴くイベント「レコードの達人」で岩田さんが紹介したレコードだ。『なき王女のためのパヴァーヌ』はすぐに買えたが、「バチェラー・ガールズ」はネットでいくら探しても見つからない。約2ヶ月後、新宿のHMVで発掘でき嬉しかった。
さて東京・大岡山のライブハウス、グッドストックトーキョーで開催する次回の「レコードの達人」(2月17日・土)では、『ナイトフライ』のUSオリジナルとモバイル・フィデリティの「ULTRADISK ONE-STEP」を聴き比べる。そしてレッド・ツェッペリン『Ⅲ』のUKvsUSマト1対決。王道ハード・ロックの「移民の歌」(USシングルも用意)はもちろん、ツェッペリンのアコースティック曲の美しさもご紹介したい。さらに昨年2017年が発表40周年にあたり、リマスター重量180g盤がリリースされたイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』を、USオリジナルと聴き比べる。ご興味のある方は、是非ご来場を。
文/斎藤好一
元DIME編集長 17年10月に小学館を定年退職。釣り、ロック、オーディオ、ワイン、車、旅行、ファッション、コスメ、まるで『DIME』のごとく多彩に興味津々。