名録音『ナイトフライ』に「ULTRADISK ONE-STEP」登場と知るや、そのワンステップの威力を実感したく、金科玉条を破り即刻購入を決意した。HMV、タワーレコード、アマゾン、ディスクユニオン、ユキム(モービル・フィデリティ盤を数多く販売)、どこにもない。日本では11月に約15000円で発売されたようだが、どのサイトも(たぶんリアル店も)予約で完売か。ヤフオクに未開封品が約22000円で出ていたが、最終的にはいくらになることかと入札しなかった(結局23000円ほどで落札だったが、僕が参加したらもっと上がっていたはず)。アメリカやイギリスのここならと思うサイトでも、すべて売り切れ。それでもなお探すと、セカイモンに約23000円で出品されていて購入。送料込みで約26000円となった。なおこの原稿執筆時(1月14日)ではe-Bayや、僕がマト1購入に利用するレコード販売サイトdiscogsにはかなり出品されていて、未開封新品で2万円台半ば〜(送料別)だ。
待ちに待った「ULTRADISK ONE-STEP」が2週間ほど到着し、早速比較試聴した。まずはUSオリジナル、曲はA面オープニングの「I.G.Y」だ。軽快で立体的なサウンド、かつてはSACDに感動していたが、USオリジナルの立体感はSACDをはるかに凌ぎ、驚いたことを思い出した。だが「ULTRADISK ONE-STEP」とUSオリジナルの差は、それどころではなかった。より立体的なことはもとより、音の輝きは増し煌びやか、何よりもサウンド全体の密度が濃い。僕の周りの空気まで濃くなった気がしてくる。近年発売されたツェッペリンやクイーンのリマスター盤を聴くたびに不満に思う、あざとい厚化粧感はみじんもない。「ULTRADISK ONE-STEP」、USオリジナルに圧勝だ。
ただし、やや冷めた意見も少々。この制作方法はマスターに劣化のない、デジタル録音の『ナイトフライ』には絶大な威力を発揮した。だが『宮殿』『Ⅱ』『狂気』のような経年劣化したアナログのオリジナルマスターテープからの制作では、ここまでの劇的な効果は期待できまい。最新のテクノロジーを駆使しても、マト1の瑞々しさは出せないと思う。この原稿を書くためにいろいろ調べたら、「ULTRADISK ONE-STEP」の第1弾は、2016年発売のサンタナ『天の守護神』と判明した。あの「ブラック・マジック・ウーマン」の入った大好きな作品。USオリジナルも持っている。もちろんアナログ録音だ。よし、アナログのオリジナルマスターから制作した「ULTRADISK ONE-STEP」とUSオリジナル、『天の守護神』で聴き比べてみようと意気込んだが、なんと市場価格12~14万円。あっさり、断念した。