●ねばり強くなりました
異動してきた先輩には、特に間違いをどう伝えていいのかがわかりませんでした。でもミスはお客様に直結してしまうので、先輩ということをあまり気にせずにやっていこうと。
ある時、注意事項をガイドさんやドライバーさんに伝える紙に、2号車の食事場所と行程順の変更の記載を書き漏らしていた。
「注意事項がないと、通常と同じ動きなんだと、ガイドさんもドライバーさんも思ってしまう。食事の場所に行っても食事がないということになってしまいます。一つ一つ確実にチェックしていきましょうね」という言い方ができました。
私、学生時代は細かいことは気にしない方だったんですよ。でも、この会社に入って気も強くなりましたが(笑)、ねばり強くなりました。学生時代の性格のままでいたら、ミスも多かったでしょうけど、今は細かいことまで目配りができるようになった自分の成長を感じます。
●自分で“企てる”部署へ
「企画という文字は“企てる”ということなんだから、何がお客様を楽しませることができるのかを自分で考えなさい」これは印象深く残っている上司の言葉です。
定期観光部でバスや食事場所の手配に3年間携わり、企画担当の部署に異動になりました。この部署の仕事は観光コースの企画です。私の最初の取り組みは体験型コースの導入で、見学と体験を組み合わせたものでした。
伝統工芸がテレビ等で紹介される機会が増えているが、ホームページで見つけた藍染の体験はどうだろうか。藍染にしたハンカチや手拭いを持ち帰れるのも魅力だし、説明も含め90分というのも手頃だ。バスツアーの企画で一番大事なのは、バスが止められる駐車場があるかどうかですが、浅草に近い藍染の工房はそれもクリアできる。
“伝統工芸”から藍染を考えたので、“伝統”つながりで歴史系のツアーにできないか。墨田区の歴史散歩と組み合わせ、食事は錦糸町の和食ブッフェ、江戸東京博物館も見学コースに加えて、藍染を体験していただく。
この「藍染体験とお江戸両国さんぽ」の初便の時は、私もツアーのバスに同行しました。藍染を体験するお客様を自分の目で見ることができて、実現できてよかったと思った。
ええ、おっしゃるとおり、確かにこの会社に入って東京観光には詳しくなりました。
えっ、東京観光の穴場スポットを教えて欲しいって。
例えば秋の行楽シーズン?それなら本駒込にある江戸時代の名園の一つ、六義園はどうでしょう。紅葉のライトアップが見ごたえあります。春の桜のシーズンなら佃島。浅草方面に比べ人が少なく、墨田川沿いの満開の桜をゆっくりと見ることができますよ。
取材・文/根岸康雄