「いつの日か自分も鉄道の乗務員に」。そんな夢に心を躍らせる高校生が集まる高校が東京・上野にある。上野駅入谷口の目の前にある「岩倉高等学校」。この学校は通常の高等学校の科目だけでなく、鉄道に関する専門的な知識を学ぶことが出来る「運輸科」が存在する学校なのだ。今回はそんな運輸科に通う1人の生徒と1人の教師に密着し、岩倉高等学校の日常をご紹介しよう。
今回密着取材をお願いしたのは3年生の六反建志くん。実は彼は親元を離れ、富山県から1人上京。「出身地である富山県を走る鉄道の運転士になるのが夢」と地元の高校ではなく、寮生活をしながらでも岩倉高等学校への進学する道を選んだ。「地元の高校に魅力をあまり感じられなかったので、夢を叶えるため岩倉に来ました。この選択には親も応援してくれました。ただ、途中であきらめるのはダメだよ、と言われましたが(笑)。寮生活は食事は出ますが、それ以外は全部自分でやらなきゃいけない。最初は大変でしたが今はもう慣れました。先輩から進路などのアドバイスももらえたり、毎日が楽しいですよ」と六反くんは語る。
さて、六反くんと共に岩倉高等学校の校内に入ってみよう。岩倉高等学校は普通科も4コースあるが、それとは別に六反くんが通う「運輸科」が存在する。運輸科は通常の高校の授業に加えて、鉄道の制度や歴史、メカニズムを学ぶ「鉄道概論」、鉄道と密接な関係がある旅行業を学ぶ授業(国家資格である旅行業務取扱管理者を習得することも可能)や、昨今鉄道の現場で重視されているサービス介助について学ぶ「ホスピタリティ」などのカリキュラムがある。そして3年生になると「運転業務」という授業が行われる。そのため、高校卒業後に鉄道会社への就職を希望する生徒が多数を占め、実際にJRや大手私鉄に多くの就職者を輩出している。
この日、六反くんは「運転業務」の授業がある日。同校の中でも非常に特徴的な鉄道実習室に入ると「ここは高校なの!?」と目を疑う光景が! この教室、なんと実際の鉄道車両を模した運転シミュレーターが2台(他教室にもう1台ある)に、ホーム施設といった本格的な鉄道施設が完備されている。生徒は3つのグループに分かれ、この教室での実習、他教室のシミュレーターを使った実習、座学と各々で鉄道の現場で必要とされている知識を学んでいく。
大日方樹先生の指導の下、運転シミュレーターで学習する六反くん