裁判所に勤務するベン・ヤロップさんは、「通勤時間はまさに時間の浪費だ」と実感した日を境に、小説の構想から執筆までを全て通勤電車内で行うことを決心。これまでに2冊のファンタジー小説を刊行しているが、すべて電車にノートパソコンを持ち込んで、少しずつ書き進めてきた成果である。
ヤロップさんは、以前は嫌で仕方なかった通勤を今では意義あるものと考えており、通勤とは、仕事と家族のための時間とは別の貴重な時間だとコメントする。
米国のウェブメディアの編集者ジャクリーン・スミスさんは、郊外の一軒家へ移り住んだことで、マンハッタンの職場への通勤時間が3倍になってしまった。しかし、彼女はこの事実をいたって前向きにとらえている。例えば、早起きが習慣化し、読書をするようになり、一人で考えに没頭する時間を確保するなど、長時間通勤にもそれなりのメリットはあるとする。また、あまり乗り気でない社交行事の誘いにも「通勤が大変なので」というもっともな理由をつけて断れるのも、良い点だとしている。
上記に挙げた、通勤時間を大活用している人の例は、ややエッジが効きすぎているかもしれない。通勤時間が長くて退屈だからといって、誰もが絵を描いたり、小説を書けるわけでもないだろう。そこでもう少し現実味のある「痛勤」ハックを、海外の様々なサイトで推薦されているものから精選して、いくつか列記したい。
●「To Doリスト」を作成する
今日やるべきことをリスト化する。単に仕事のことだけでなく、帰宅前の買い物など私用も含めて。優先順位を再考し、各タスクに要する時間も見直す。「To Doリスト」の中身を精緻化するだけで、通勤時間は超えないまでも公私の時間浪費がかなり減らせる。
●雑誌・書籍を読む
「たいていの情報はスマホで無料で読める」から、紙に書かれた情報は要らないって?一理あるかもしれないが、紙媒体は今でも、ネット上に存在しない知識や情報の宝庫である。スマホ老眼を予防するためにも、通勤時こそ本を読もう。
●瞑想をする
「瞑想」という言葉が抹香臭く感じるなら、「マインドフルネス」といった今はやりの言葉に置き換えてもよい。目をつぶり、深く呼吸して、車窓の外でなく自分の内側に注意を向ける。マインドフルネスには、ストレス軽減や創造性の強化などの効果があるとされており、単にぼーっとして車内を過ごすよりは、ずっと建設的である。
●新たなことを学習する
これはやや曖昧だが、サイトによって「新たなこと」とは「外国語」だったり、「著名大学教授の授業動画」だったりする。日本人ならさしずめ「英語」が最初に思い浮かぶかもしれないが、これにとらわれず料理でもスポーツのルールでも、自宅で学習すると億劫に感じるものこそ、通勤時に取り組むとよい。
主要参考資料:
FORTUNE: These U.S. Cities Have the Worst Commute Times
BBC NEWS Magazine: Readers’ tales of extreme commuting
BBC NEWS Magazine: The commuters who enjoy being creative with their time
Business Insider: My commute time to work recently tripled — here’s why I’m excited about it
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。
※記事内のデータ等については取材時のものです。