■番外編、実験的に6L6GCとKT66の音を聴いてみた
6L6GCは6L6の最終進化系である。本機は6L6GC用の設計ではないため、設計通りのスペックは望めないが、どんな音色なのかを聴いてみた。そしてアメリカ発の6L6に対抗してイギリスGECが開発したKT66の存在がある。互換球ではないが、どんな音がするか興味があったので差し替えてみた。真空管が太すぎて出力トランスケースにやや干渉したが、大迫力の真空管アンプに変身した。
Electro Harmonix『6L6GC EH』新品マッチドペア管、ペア5400円。有名なRCA『6L6GC』BlackPlateをモデルに製作された。振動低減のためスプリングでマイカを固定している。
背が高い真空管なので差し替える迫力があるフォルムになる。落ち着いた音。低域はタイトで高域はなめらか。情報量が多い音で、女性ボーカルは響きが少なく、ちょっとギスギスすることがある。透明度が高くハイファイ調の音だ。
Gold Lion『KT66』新品マッチドペア管、ペア1万200円。ロシア製のブランドでGECが別ブランドで販売していたGenalex Gold Lionの復刻版。中国製のGolden Lionとは別のメーカーである。右側の6V6GTと比較すると巨大サイズであることが分かる。
迫力の外見とは裏腹に穏やかな音。透明感があってクリアー、ボーカルは前に出る。中低域の量感があるが、低域はボン付かない。真空管目立ち過ぎである。
■真空管はバラツキがあるから面白い!
やや強引に10種類の真空管で球ころがしをやってみた。好印象だったのは、Westinghouse『6V6GT』とSTANDARD BRAND『6V6GT』である。真空管にはバラツキがあるので、同じメーカーの同じ型番の球でも同じ音がするとは限らない。また、アンプによっても音は違うので、今回の結果が読者の球ころがしの参考になるかどうかは分からない。まあ、とにかく音は確実に変化するので、楽しくなってついつい真空管を大人買いしてしまう。そして置き場所に困るのだ。ビンテージ管には高額な球もあるが真空管は消耗品と考え、私はペア1万円以下を目安に探している。ebayで送ってもらって割れていたり不良品だったことは一度もないが、他の製品より送料が高いのが悩み所である。解決策はまとめ買いか? NOSといっても古い球なのでいつ壊れるか分からない。この試聴が終わったら、突然、6N9Sのヒーターが点灯しなくなった。ペア管必要ないと思っていたが、もう1本と差し替えて無事、音が出た。JJやエレハモは送料を考えると日本で購入した方が安いこともあるので、衝動買いしないように。私はKT88のBlueGlassペア管が$37だったのに落札できずに悔しい思いをした。話を戻すと真空管は多少の無理も利くが、突然死することもあり、その音はみな個性的でオペアンプ交換よりもずっと楽しめた。
写真・文/ゴン川野
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!
※記事内のデータ等については取材時のものです。