■先に『グラファイト グリル&トースター』を発売した理由
千石氏によれば、『グラファイト トースター』を後に発売したのは「作戦」だという。その作戦とは、しっかり4枚焼けるものを先に出して性能を証明し、評価を確立した後に家電量販店向けに『グラファイト トースター』を投入するというものだった。
「『グラファイト グリル&トースター』はパンが4枚焼けるのですが、4枚焼けるトースターを調べると、ほとんどがギリギリ4枚入るか、焼けないものでした。ならば、しっかり4枚焼けるものを先につくって発売しようということなりました」と千石氏。ただ、家電量販店だと、商品のよさがきちんと伝わらないどころか、高価なため商品を取り扱ってくれない恐れもあった。
そこで、『グラファイト グリル&トースター』は家電量販店ではなく、ネット通販やデパートなど商品のことをきちんと説明した上で販売してくれるところに販路を限定した。そして評判が高まったタイミングで、家電量販店向けに『グラファイト トースター』を投入することにしたのである。
『グラファイト グリル&トースター』と『グラファイト トースター』の大きな違いはサイズで、あとは遠赤グラファイトの取り付け角度や反射板を少し見直しただけ。すべてサイズ変更に伴うものばかりで、「開発はそれほど手間ではなかった」と千石氏は言う。
『グラファイト グリル&トースター』でできる料理については、HP上でレシピを公開している。ただ、当初は基本的なレシピしか用意しておらず、ユーザーが自らネット上でレシピ情報を発信していたそうだ。現在は50品ほどのレシピを公開しているが、ユーザーによるレシピ情報の発信は「今後も楽しんでやってほしい」と千石氏は話す。
『アラジン グラファイト グリル&トースター』では、オムライス(左)やりんごのタルト風パンケーキ(右)のほか、様々な料理がつくれる(掲載画像のレシピ協力:Haruru料理教室 料理研究家 双葉)
★★★取材からわかった『アラジン グラファイト グリル&トースター』/『アラジン グラファイト トースター』のヒット要因3★★★
1.機能面の差別化
他社にない独自の遠赤グラファイトを搭載。瞬間的に高温で発熱する特徴が、何よりの差別化要因になった。
2.ブランドイメージの踏襲
デザインは『アラジン ブルーフレーム』のイメージを踏襲。これにより、アラジンブランドであることをしっかり認識させることができた。
3.美味しいトーストが焼ける
トースターに求められることは、美味しいトーストが焼けること。高温・短時間で表面を重点的に焼き上げることにより、外はカリッ、中がモチモチとした日本人好みの食感のトーストを焼くことができる。
「全部で1万台売れればいいと思っていた」と言う千石氏だが、実際はその20倍以上売れている。安ければ2000円程度から買えるトースターで、2万円近いものが売れているという現実。高価格帯で先行した炊飯器でも実感したが、ユーザーが価値を認めれば、多少高価でも商品は買ってもらえるということである。
■製品情報
http://www.aladdin-aic.com/products/alize/aladdintoaster/index.html
http://www.aladdin-aic.com/products/alize/aladdintoaster2/index.html
■文/大沢裕司
ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。
■連載/ヒット商品開発秘話
※記事内のデータ等については取材時のものです。