■脳の成人式は30歳
ここまで読んで「どれも思い当たるぞ……」という読者もいるかもしれない。しかしだからといって落胆する必要はない。加藤先生によると、脳はどんどん成長し続ける器官だそうだ。
「日本人は20歳で成人式を迎えますが、脳にとっては30歳が成人式です。20代で社会を通して得た様々なことが、30歳になって『脳の個性』として華開きます。脳の個性とは、その人なりの脳番地の使い方のことです。運動系や聴覚系をメインに生活する人、思考系や理解系をメインに仕事をする人など、その人が今までの人生で主に使い続け、育て続けた脳の番地が30歳を境に際立ち始めるのです」。
30代以降から仕事が楽しくなってくるとよく言われるが、それはこのような変化が脳に起きていたからかもしれない。
「しかし40代後半になり、脳を成長させる要素がないと、脳の劣化が強くなってきます。特にこの年代は役職がつき始めます。ハンコ押しだったり部下の管理だったり、ルーティンワークの延長で頭が良くなるわけではありません。可能ならば自分で仕事を経営してみたり、ライフスタイルをガラッと変えてみたり、もっと自分をイキイキさせる大胆なチェンジをしてください」。
20代や30代の頃より活動量が下がるのは脳にとって問題だ。20代のように身体を動かして働いて人付き合いをしていれば、脳はいつでも新鮮に保つことができる。
「脳の成人式を迎えた30代以降も、自分自身を若々しく保ち、成長するため新しいことに挑戦し続けていたら、脳はどんどん成長し続けます。長年に渡って脳の鑑定を続けてきた私は、脳は100歳まで成長できる器官と感じています。脳のゆがみを直し、脳をコンディショニングすることが、私たちの毎日をさらに豊かにしてくれるはずです」。
脳は身体のすべてをつかさどる器官だ。脳を元気に若々しく保つことが、私たちの毎日を新鮮で楽しいものするはず。「えーと」「あの」が口癖になっている人は、ここらで毎日のルーティンに大胆なチェンジを取り入れてみてもいいかもしれない。
取材・文=いのうえゆきひろ