■旅の途中
SONOMA『Model One』を箱から出してセッティングして、Mac miniに接続して音を出して、最初に思ったことは、失敗したかもしれない。ヘッドホン祭で聴いた音と違う。情報量が少なく、何かおとなしくてつまらない音に思えた。こんなはずでは…… と思ったのだが、オールインワンなので交換すべき部分が見つからない。私はエージングに重きを置いていないが、もしかするとアンプの電源を入れたばかりかもしれないと思った。そのままの状態で数日、音楽を聴き続けたが事態は改善せず。
問題があるとすれば、電源をMacと同じPC用テーブルタップから取っていることぐらいだ。ケーブルの取り回しが悪くなるので、こちらに挿していたのだが、パワーアンプで使っているオーディオ専用のタップに挿しかえた。すると音が激変! 情報量が増えて、緻密な音になり、生き生きとした音になった。電源の取り方だけで、こんなに音が変わるとは見た目より繊細なシステムである。Macと接続するUSBケーブルを交換しても音が変わる。そこで、今度はラズパイ3をアンプのすぐ後ろに持って来て、短い同軸ケーブルで接続するとまた音が変化した。それなら、もっと短いケーブルならどうだろう。また同軸ケーブルの太さと種類によっても音は変わるのか? という疑問がわき75Ωの同軸ケーブルを秋葉原であさった。結局、同軸ケーブルカッターとか、カナレ対応カシメ工具も入手してケーブルTVメンテナンス要員のようになってしまった。
電源の取り方を変えてからのSONOMA『Model One』の音は、まさに無色透明で、特に低域がタイトで解像度が高く、全く被らないため楽曲によっては音楽全体が寂しい感じに聞こえるものがある。その一方で楽器の音が違って聞こえるほど音色が変わったり、つまらない録音だと思っていたのが、リアルな演奏に聞こえたり、日々、新たな発見がある。いままで日本では聞いたことのないカラッとした湿気のない音だ。響きに湿り気がなく、瞬時に立ち上がり消えていく。曖昧さがなく、楽曲によってはドライに聞こえる。音については、改めてレポートしたいが、あまりにもピュアな音で、清濁併せ呑む大人にはついて行けないこともあるが、そこはセッティングで自分好みに詰めていきたい。まだ、その旅は始まったばかりなのだから。
とカッコ良く締めたいところだが、静電型ヘッドホンを選んでしまったため、他のヘッドホンアンプやDMPの試聴には使えず、DAC内蔵ヘッドホンアンプも他のヘッドホンには接続できず、USB/DACとしても使えないのだ。これではリファレンスヘッドホンを導入した意味がほとんどない。結局、機材は増えたが振り出しに戻っただけなのだ。
アンプは手が届く位置でボリュームが操作できる場所に置いてみた。
最短距離でラズパイ3からのS/PDIF出力を同軸ケーブルで接続。音源はNASである。これも将来的には音楽専用NASに接続してみたい。
同軸ケーブル自作のために集められたケーブルと端子と工具。その結果は次回のレポートで!
写真・文/ゴン川野
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!
※記事内のデータ等については取材時のものです。