新エンジンはロングストローク化で燃費をかせぐ仕様になっているのだが、ロングストローク型だとパワー的に不利。そこでS660にも採用されていない!ホンダならではの可変バルブタイミングリフト機構=VTEC機構を採用。燃費と動力性能のバランスを見事に解決・・・どころではなく、先代NAモデルとは別次元の走行性能を発揮。街乗りのゆとり、静かで滑らかで上質感ある乗り心地の良さに加え、先代モデルが苦手だった高速走行も制限速度内なら楽々こなせるようになっていたのだから恐れ入る!!
この新型N-BOXのNAモデルで東京~軽井沢を往復したのだが、高速ではホンダのエコモードスイッチとなるECONをOFFにすれば2名乗車でも動力性能にまったく不足なし。しっとりとした乗り心地、軽自動車として無類の静粛性の高さには驚くばかりで、下手なコンパクトカーを凌(しの)ぐレベルにあると言っていい。
軽井沢の一般道、裏道では路面が荒れているところも少なくないのだが、そんな路面を走ってもザラザラ感、ビリビリ感は皆無に近い。
上級にもほどがある乗り心地に関しては、サスペンションのバネレートを25%落とした乗り心地重視の設定が効いている。ただしただサスペンションを柔らかくしただけだとふわふわした落ち着かない乗り心地、操縦性になってしまう。そこでフロントスタビライザーとともに、ホンダの乗用系軽自動車初採用となるリヤスタビライザーを追加。カーブやレーンチェンジなどでロールを押さえ、安定させる効果ばっちり。
さらにコーナリング時のステアリング操作に対してVSA(Vehicle Stability Assist)を用い、自動的に内側片輪にブレーキを軽くかけ、旋回をアシストし安定させるアジャイルハンドリングアシストなる上級機能をふんぱつ。カーブでの安定感、前後バランスは全高1.8m前後のハイト系軽自動車とは思えないレベルにあり、山道も安心してスイスイ走ることができるのだ。
ところで、新型N-BOXにはターボモデルも用意されるのだが、今回、NAモデルとの動力性能差は大きく縮まったと断言できる。NAとターボモデルに取っ替えひっかえ試乗したのだが、NAをターボモデルと錯覚した場面もあったぐらいなのである。
新型N-BOXはたとえNAモデルでも、高速、ゆるやかな登坂走行を含めその実力はハイレベル。乗り心地、こだわり抜かれた静粛性能に至っては“軽自動車感”などまったく感じられないほどなのだ。それこそ一家に一台のファーストカーとしてもこれなら使える室内大容量の「小さな上級車」とボクは呼んでいる。大人の趣味の道具を目いっぱい積み込み、愛犬を乗せるにも最高の1台と言っていい。個人的には標準車の2トーンカラーがオシャレ度が高く、お薦めだ。
■関連情報
ホンダN-BOX
http://www.honda.co.jp/Nbox/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
※記事内のデータ等については取材時のものです。