■アルティックA7を思わせるフロントロードホーン
私はホーンスピーカーが好きだ。と言えばバックロードホーンを意味するのだが、実は世の中にはフロントロードホーンも存在する。その代表格がALTEC LANSING A7である。アルティックが作った劇場用スピーカーで大音量再生のため、高域はコンプレッションドライバーとホーンの組み合わせ。低域は30cmまたは38cmウーハーを使い、能率を高めるためにウッドホーンが採用された。
ボイスオブシアターの愛称で親しまれ、1945年にA1から登場、1954年にA7が生まれ、最後はA10まで製品化された。劇場用なのでエンクロージャーが巨大で、おいそれとは手を出せない。カスタムイヤモニメーカーFitEarの代表取締役社長の須山氏はA7に惚れ込んで、リスニングルームで日夜、鳴らし込んでいるという。A7はオーディオマニアを魅了するオーラをいまも発し続けているのだ。
アパート住まいの私には本物のA7を鳴らすなど、到底無理なので、今回はDigiFi 19号の付録フルレンジスピーカーユニット用エンクロージャーキットを作ることにした。容積6Lで高さ32cm、幅17.9cm、奥行き18cm、重さ1.82kgとデスクトップ用としてはかなり大型である。価格は1万6200円(税込)。DigiFiは2015年の19号にオリジナルのオラソニック製8cmグラスファイバーコーンを使ったフルレンジスピーカーユニットを付録にしている。本機はそれを鳴らすためのエンクロージャーキットの3種類のうちの1つで、最も組み立て難易度が高いキットである。難易度が高いといっても板材はカット済みで木工用ボンドで貼り付けるだけなので、問題は精密に組み上げられるかどうかだけだ。木工用ボンド以外にハタ金は絶対に必要になる。板材は木口を45度にカットした部分がありここの貼り合わせが難しい。またMDF無塗装仕上げなので、ぜひともグレーに塗装したい。
■塗装してから組み立ててみた
キットは無塗装で組み立ててから塗装することが推奨されている。なぜなら側面の板材がテープで仮止めされており、これにより板材がズレずに組み立てられるのだ。私は裏面も底面も全部塗装する6面仕上げを目指すので、底板などは組み立て前に塗装しておきたい。どうせなら全部の板を組み立て前に塗ってしまおうと決めた。塗装に使うのは水性缶スプレー。MDFのザラザラ感を生かすためサーフェイサーは吹かずにそのままグレーで塗装する。明るいグレーではなくムラになりにくいチャコールグレーを選択した。しかし、仮止めテープ剥がしたことで、組み立ての難易度がアップした。
みなさんは素直に組み立ててから塗装することをオススメする。その際はテープを剥がした後にノリが残っているので、これを除去するのが重要。出来ればサンドペーパーを掛けてから、サーフェイサーも吹いた方がいい。オリジナルのA7に近付けるなら塗装面はツルツルに仕上げたい。