■連載/ヒット商品開発秘話
寝起きが悪い、日中に眠気を感じる……。このような睡眠に関する悩みを抱えている人は多いのではないだろうか? そのような人でもし、朝起きたときに口や喉の乾き、喉のイガイガがある、あるいは寝ているときにいびきをかいていれば、その原因は口呼吸にあるかもしれない。こうした症状を鼻呼吸に導くことで軽減するものとして現在、好評を博しているが、小林製薬の『ナイトミン 鼻呼吸テープ』である。
2017年4月に発売された『ナイトミン 鼻呼吸テープ』は、就寝時に口に貼り付け物理的に口を閉じることで、口呼吸から鼻呼吸に誘導するもの。年間売上2億円を目標に発売したところ、半年で目標を達成してしまったほど売れている。
■ニッチだが店頭には置かれている
就寝中に口呼吸になる理由の1つは、筋力の落ち込みにある。加齢により口の筋力と舌の筋力が落ちると、寝ている間に自然と口が開いてしまい、口や喉の乾きにつながる。また、舌の筋力が落ちると、寝ているときに舌の付け根が落ち込み気道を狭くする。これにより、呼吸に合わせて粘膜と舌の付け根が震え、いびき音が大きくなることもある。同社が調べたところ、就寝中の口呼吸を自覚している人は、全国に2000万人いることが判明しているが、口呼吸により口の中の乾きや喉のイガイガ、いびき音が発生することがあるということは、あまり知られていない。
睡眠に関するこのような悩みを抱えている人は多いことから、同社では睡眠に関わる商品を開発することにした。開発に当たり2016年1月、睡眠障害の治療を専門とする杏林大学医学部付属病院の中島亨医師(杏林大学医学部 准教授)に相談。すると、一部の医療機関では口呼吸を改善するために、口にテープを貼る指導をしていることを教えられた。『ナイトミン 鼻呼吸テープ』の開発は、中島医師のこの言葉がヒントになった。
口に貼るテープに興味を持った同社であったが、実は既に他社から商品化されていた。しかし、あまりにもニッチな商品ゆえに、そのことを社内で知っていたのはほぼ皆無だった。
「開発を進める前の会議で提案したとき、小林章浩社長ら上層部から『これは売れるのか?』と疑問視されました」
こう振り返るのは、日用品事業部マーケティング部パーソナルケアグループ ブランドマネージャーの藤江昌広氏。あまりにもニッチすぎるため売れ行きが懸念されたが、同社が調べたところによると、ニッチではあるものの、ドラッグストアなどの小売店によく置かれていた。知名度がないだけで売り場には根付いていることから、一定の需要は見込めると判断し、商品化することになった。
小林製薬
日用品事業部
マーケティング部
パーソナルケアグループ
ブランドマネージャー
藤江昌広氏