■深刻な問題
この2人は、一応は課長である。課長ならば、なぜ、論理で説得をしないのか。なぜ、「役員」や「部内」「上司」という言葉を持ち出し、自説を押し通そうとするのか。おそらく、その大きな理由は、論理に自信がないからだろう。2人は、私よりも10年ほどはキャリアが浅い。ふだんから話をしていると、未熟な部分があり、人を納得させ、動かすほどのレベルには達していないと感じる。それだけの経験を踏んでいない。それほどの言葉をもっていないのだ。
さらなる問題は、ここからである。私が観察をしていると、この課長たちは部下である20~30代の社員の力量や実績、仕事への姿勢などを事実に基づいて判断することがあまでできていないようだった。むしろ、表層的にしか見ることができない。たとえば、「彼はがんばっている」「彼女は協調性がない」というレベルにしかとらえることができていない。
私が2人と会うたびに、部下のことを聞かされたが、その大半は実態からかけ離れているかに見えた。経験が浅いからなのか、部下の観察も甘い。感覚的で、情緒的ですらある。つまり、「好き嫌い」で判断しているように見えた。ところが、この場合も「上司も…あの男のことを協調性がない」などと、「上司」という言葉を持ち出す。そして、自分の見方を認めさせようとする。一貫して論理がないのだ。
部下の前で「役員が・・・」などと口にする上司がいたら、今回のコラムを思い起こしていただきたい。このレベルの上司に必要以上に気を使うと、滅入るばかりではないだろうか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋