■連載/あるあるビジネス処方箋
年末が迫る。この1年を振り返り、私は2人の課長に苦しんだ。私が外部委託ということで、この2人の部署から仕事を請け負っていた。仕事を進めていくと、2人の口癖に気がついた。「上司が…」「役員が…」というものだ。通算で、30~40回は聞かされた。このような言葉を持ち出すときは、自分の考えや意見が否定される場合だった。
今回は、2人の課長が頻繁に口にした言葉を通じ、上司との関りを考えてみたい。
■40歳前後の女性課長
IT企業(社員数300人)の40歳前後の女性(人事の課長)は、自分の言い分が認められないと、「役員が・・・役員が・・・」と口にする。あるいは、「私は構わないけれど、役員がこういうように言っているから…」と話す。「役員」という言葉を持ち出し、自分の言い分を押し通す。説得力を持たせるために、「役員」という言葉を持ち出しているかにも思えた。本来は、「役員が・・・」ではなく、「…という理由だから、この考えが大切」と言うべきなのだ。
おそらく、「役員が・・・」は嘘なのだろう。自分の言い分を認めさせるための方便でしかないのではないか。私がここまで言い切るのは、実はその会社の役員とその後会って、話を聞いたからだ。役員は部下である女性の「役員が・・・」を嘘とは言っていなかった。しかし、「そんなことは知らなかった」とは話していた。そして、「あの女性(課長)は感情論に走りやすく、冷静な話し合いができないときがある」とも話していた。その後も、この女性は自分の考えを否定されると、「役員が・・・」「会社が…」などと言い、押し通そうとしていた。
なぜ、「役員」という役職を持ち出すのか。おそらく、人の感情に訴えることで自分の考えを認めさせようとするのだろう。端的に言えば、「論理」などないからだ。「こうだから、こうなんだ」という考えがあいまいであり、それを言えば、より一層不利になり、自分の考えが否定されると思っているのでないだろうか。少なくとも、私が何度聞いても、「論理」はなかった。
■45歳前後の副編集長
社員数200人ほどの中堅出版社に勤務する45歳前後の男性の副編集長(課長)も、同じことをする。たとえば、副編集長が修正した原稿をめぐり、私が「それは、避けたほうがいい」などと言うと、「部内では~という声がある」「上司である編集長が~」と口にする。そして、自分が修正した原稿を掲載しようとする。
私の知り合いである、ほかの書き手も同じような経験をこの副編集長との間でしていた。自分の考えに何かを言われると、「部内では~」「上司が~」と言い始めるようだった。実は、副編集長が嘘を繰り返していることを、元の上司である編集長(現在は、局長)やほかの社員から聞かされていた。元編集長は、「当時、部内では~という声はなかった」「あの頃の上司である編集長の私は、そんなことを言っていない」と言い切る。私が、元の上司と接点を持っていることを知らずに、その後も、副編集長は嘘を繰り返していた。