●絹どうふの厚揚げはNG
逆に任されて提案したけどダメだったのが、「秋のかながわ味わい弁当」のおかず。今年9月に発売されましたが、小田原産の梅干し、三崎マグロ、かまぼこ、崎陽軒のシウマイ等、主に神奈川県産の食材を使いまして。なめらかな食感もおかずに加えてみようと、絹豆腐の厚揚げを入れたんです。開発室長も調理長もいけるんじゃないかという感触だったんですが、最終的なOKは社長です。
「満足感に欠ける、食べごたえがない」
会議の試食では、社長からそんな指摘が出ました。なめらかな食感が裏目に出たんです。絹豆腐の厚揚げは、味もシンプルでインパクトに欠ける。
さてどうしようか。そうだ、コンニャクは食感がある。さらにアクセントをつければ弁当のインパクトが増す。そこでピリ辛のコンニャクに代えたんです。これで社長の了解もとれました。
「あなたが作ったお弁当は、シリーズの第何期に発売されたと社歴に残る。すごく大事な仕事をやらせてもらっているんだね」
横浜市民の母親は崎陽軒の弁当に特別な思い入れがあって、何かとっても名誉な仕事をしているような思いを持っているみたいです。
今はご注文専用のオードブルの開発に携わっているのですが、先日も配送テストの時に料理を作るのが遅れ、容器の準備も遅れてしまった。やることがたくさんあると、何から手をつけていいかわからなくなる欠点は相変わらずですが、持ち前の一つのことに集中する力を発揮して新しい横浜名物を作っていきたいですね。高齢化が進む中で、塩分の控えめなものや噛みやすさも考えて、お弁当を楽しみにしている多くの方々の期待に応えたいです。
取材・文/根岸康雄