●生姜汁でブレイクスルー
冬季限定は「おいしさ長もち 金目鯛シウマイ」。前年発売して「年末年始の手土産に良かった」等のお客様の声を元に、「今年も金目鯛で行こう」となりまして。まず、「金目鯛の煮付けのような風味を出そう」というコンセプトをより良くするために、市販の煮付けのタレをひき肉と混ぜ合わせ、試作のシウマイを作りました。ところが市販のものは照りを出すために増粘剤が入っていて、食感がくちゃくちゃになってしまう。
「これは失敗だね…」と、上司も厳しい表情でした。煮付けのタレを入れるのはやめて、醤油と砂糖の配合で煮付けの風味を出そうと。うす口醤油と濃い口醤油の配合を変えたり、砂糖の量を調整してより美味しくするための試作をしました。
「去年の金目鯛のシウマイは、魚が苦手な人から魚臭いという声があった」「魚臭さを消すために前年はおろした生姜を使ったが、生姜の匂いが出すぎていたな」先輩や上司とは、そんな話し合いをしました。魚臭さを取り除くために試作を繰り返す中で、「生姜そのものではなく、生姜の汁を使ってみてはどうでしょうか」という私の提案が採用されて、魚臭さの改善に繋がりました。
「肉と魚の柔らかい食感はイマイチ合わない。それも前年からの課題ですね」「シウマイが柔らかくなりすぎないようデンプンや小麦粉で調整しているが、小麦粉の中でも特殊なものがある。そういったものを使ってみたら案外いいかもしれないね」
そんな上司の助言で、業者に問い合わせ、何種類か提案された小麦粉を使い、何回もシウマイを作りました。材料を入れる順番も試行錯誤して、金目鯛と生姜汁を混ぜて、ひき肉を入れたほうがいいのか、それとも最後に生姜汁を入れたほうがいいのか、とにかく試作を繰り返したんです。
渡邉さんの格闘はシウマイだけではない。配転になると、持ち前の集中力で弁当開発に全力投入、オリジナル弁当を生み出していくことになる。
以下、後編へ続く。
取材・文/根岸康雄