翌朝はすがすがしい気持ちでフライブルク方面のアウトバーンに乗った。相変わらず渋滞区間があったものの、状況は次第に好転したからだ。一般的にアウトバーンの推奨スピードは130km/hといわれているが、この速度で走る車はほとんどいない。いちばん遅い車線で走る車ですら、最低アベレージが130km/h程度だ。
普段走ることのない速度域で走っていると、最初は不安に感じたが、少しすると感覚が鈍くなり、180km/h以下だとそれほど速いと感じなくなった。人間はやはり適応する動物だったのである。
前方に交通渋滞があることを知らせる可変式案内板。電光板ではないのが特徴
ある程度スピードに慣れてきた。すると、一番気持ち良いと思えるのは、速度制限の標識が速度無制限を知らせる、黒い円と5つの斜線に変わる瞬間だと気づいた。まるで自動車レースでスタートの旗が振られたような感じといえよう。この瞬間から、アクセルを深く踏みこんだ車は、急激な加速と共に、あっという間に180km/hを超えていく……この快感を満喫するために、高性能の車が必要となるわけだ。
数年前に訪れたミュンヘンでも、「A95アウトバーン」を利用したことがある。その時は走った距離も短く、ほとんど混まない場所だったのでわからなかったが、今回はアウトバーンの問題点も感じることができた。
最終日、マンハイム周辺の道路でのこと、前方の車線がすべてトラックの行列でふさがっており、追い越しのため車線変更して170km/hまで加速をしたのだが、前方のトラックがほかのトラックを追い越すために、いきなり追い越し車線へ入ってくるのだ。
瞬時に多くの考えをまとめ、判断をしなければならなかった。幸い、適切に減速をすることができたのだが、低速車両のドライバーの速度感覚が鈍いと、非常に危険な状況になることがわかった。高速走行時の急なブレーキは大きな事故を招きかねないからだ。速度を出すのが許されてはいるが、突発的な状況が発生した場合でも対応できる、十分な経験が必要だということを感じた瞬間だった。
また、工事区間も問題だ。渋滞の多くが工事区間で発生するが、特に速度制限区間でよく発生する。渋滞の原因が実は通行量だけではなかったことが明白だ。