今年9月から現行モデルにも適用された「平成28年排出ガス規制」によって、さまざまなモデルがラインナップから姿を消すことになった。じつはその中で、400ccクラスのアメリカンバイク……ミドルクルーザーすべてが生産を終了したことをご存知だろうか? 90年代初頭、ヤマハ・ビラーゴやホンダ・スティードによって火がつき、ファッションとバイクを結びつけることによって、これまでバイクに興味のなかった人たちをも巻き込んだミドルクルーザーブーム。ここでは各時代を象徴するモデルを紹介するとともに、その功績をあらためて振り返りたい。
■クラシックにスポーティー……個性豊かなモデルがたくさんあった!
もともとクルーザーといえば、ハーレー・ダビッドソンがその本家ともいえる存在。しかし、免許制度の違いもあって、ハーレーには普通二輪免許で乗れるモデルは存在しない。そこで国内メーカーは昔から、400cc以下のクルーザーを数多く作ってきた。
古くは1970年代、Z400LTDやXS400スペシャルなどで、これらはスポーツモデルにアップハンドルや段付きシートを装着し、リアサスペンションを短くしてローダウンを施したもので、ハーレーなどの「本格クルーザー」とは似ても似つかないもの。当時はこれらのモデルもそれなりに人気を博したのだが、もっと「らしい」モデルが欲しいという要望が高まり、各メーカーが専用フレームを使った「本格クルーザー」を生み出したのが、80年代中頃である。
こうして誕生したヤマハ・ビラーゴやスズキ・サベージはロー&ロングのシルエットを持ち、大型二輪免許(当時は「限定解除」)を持たないライダーや、高価なハーレーを買えないライダーに人気を博した。そして80年代後半、ホンダが発売したモデルが、密かに高まりつつあったクルーザー人気に本格的に火をつけた。そう、スティード400の登場である。
一見するとリジッドフレーム(リアサスペンションのないクラシカルなフレーム)に見える外観に、美しいV型2気筒エンジン、映画「イージー★ライダー」に出てくるチョッパーを思わせる長くて寝かされたフロントフォークなど……そのどれもがこれまでのミドルクルーザーにないクオリティー。その秀逸なスタイリングに、従来のライダーだけでなく、これまでバイクに興味のなかった若者までもが飛びついた。
そして90年代に入ると、本格的なクルーザーブームが到来。ホンダだけでなく、スズキやカワサキからもV型2気筒エンジンを搭載したミドルクルーザーが次々とリリースされ、さらにヤマハからドラッグスター400が登場。こうして90年代後半から00年代前半に、クルーザー人気は最盛を迎えたのだ。
その後は熟成期に入り、ミドルクルーザーは定番ジャンルとなり、根強いファンに支えられた。しかし、その後も相次ぐ排ガス規制によって、ラインナップは徐々に減っていき、それとともに人気もゆっくりと下火になっていった。そして2010年以降は、現行として残ったモデルもほとんどモデルチェンジをすることもなくなり……ついに先日、全モデルが生産を終了することになったのだ。
こう書くと、なんとも寂しい感じではあるが、実際には今でもクルーザーファンは多くいて、今でも各地で開催されるイベントやファンミーティングは大盛況だという。だからこそ、現在ラインナップがなくなってしまったのはあくまでも一時的なもの……近い将来、魅力的なミドルクルーザーがリリースされることに期待したい!