●それじゃダメだ
発売して21年を迎えた『たまごっち』は、ガールズトイ事業部を支えるアイテムの一つです。昨年、発売された『たまごっち』のマーケティングも担当しました。負けず嫌いの私は担当になったからには、自分で考えて物事を進めたいと思っていたんです。
でも周りはたまごっちのことを知り尽くした大先輩ばかり。例えば年間の販売個数の予測を立て、部材が無駄にならないよう適正な数を決める。責任が伴うし、難しい判断なのはわかりますが、「あと何千個いけるかなぁ」みたいな話は私を飛び越え直接、上司同士が話を進めてしまう。それは仕方がないことなんです。上司は私なんかよりも、はるかに知識と経験を積んでいるのですから。でも、ちょっと悔しくて……。
女児向けアニメのプリキュア商品のサブ担当だった時も、販促物を作ることになって。私は入社1年目から玩具売り場周りをしていましたから、子供たちが玩具に触れ、楽しんでいる姿を見て親が買う様子も見てきました。ですから販促物も「子供達が手に取り、遊べるものを店に置くべきだと思います」と、提案したんです。でも「コストがかかり過ぎて予算内に納まらない。現実的ではないね」と、販促物をディスプレイにして、見せることで販売につなげる形になりました。
ちょっと気持ちが荒んでいたんですね。
「どうせ私の意見なんて聞いてくれない。みんなの好きにすればいいんですよ」
20代の先輩社員とごはんを食べに行った時、ポロっと言葉にしたら、
「それじゃダメだと思うよ」と、先輩からそれとなく諭されました。
「自分の意見が叶わなくても、渡邊さんが考えたことが大事だよ。どうせ聞いてくれないなんて思っちゃ絶対にダメだ。実現しなくても関わりを持って取り組むべきだし、その方が楽しいはずだよ」
その言葉は心に残っていますね。
思い返すと、「プリキュアの変身アイテムが年間どれくらい売れるか考えてみて」と、上司に言われ、後でやろうと思っているうちに期限までに間に合わなかったことがありました。
「できなかったら事前に言ってほしい。どうしていいかわからなかったら聞いてほしい」とその時、上司にアドバイスされまして。私は報告や相談が十分にできていなかった。“ホウレンソウ”の大切さがよくわかっていなかったんですね。上司に逐一、報告し相談して自分の考えと照らし合わせていく、そんな仕事の進め方がわかってくると、仕事のはかどり方が違ってきました。
渡邊奈津美さんの“悪戦苦闘”は、まだまだ続く。
取材・文/根岸康雄