■あなたの知らない若手社員のホンネ
~京浜急行電鉄株式会社 杉山誠一さん(28才、入社5年目)~
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若い部下は何を考えているのか。また、20代に読者にとって、同世代はどんな状況に置かれ、どのような仕事をしているのか。語るのは京浜急行電鉄株式会社、鉄道本部施設部通信課、杉山誠一さん(28才)入社5年目のである。学生時代は新素材を使った太陽電池の研究に没頭したが、入社後は金沢文庫通信区に配属。作業着にヘルメット、安全靴を履き腰に道具入れを下げ、信号保安設備保守の仕事に従事。大雪の時は体力の限界を感じるほど、線路の雪かきをして電車の運行に努力。“コミュニケーションはメシだ”という現場の雰囲気にすっかり馴染んだが、乗務区に配転になると腹痛を起こす癖が悩みのタネに。乗務中に何度かトイレに駆け込んだ。
●先輩の一言
車内放送でも先輩に注意されましたね。品川の次の駅の泉岳寺止まりのときは「この電車は泉岳寺行きです」と、放送しなければいけない。それを「この電車は泉岳寺方面行きです」と、言ってしまって。
先輩としてはその場で注意したい。でも「お前、違うだろう」と言ってしまうと、マイクにその声が入って車内中に聞こえてしまう。仕方なく先輩は足でドンドンと僕をこずいて。『あッ』失敗に気づいた僕はあわてて、「失礼いたしました」とマイクに向かって、言い直したことがありました。
信号の現場では技術面しか見ていなかったので、お客さんや乗務員の先輩と接して、実際に電気がどのように使われ、役立っているのかを見ることができていい体験だったのですが。途中下車してトイレに駆け込んだ腹痛のプレッシャーが、ストレスに繋がったのかもしれません。僕は学生時代から扁桃腺を腫らす癖があって、車掌のときも扁桃炎で40度の熱が出て、一週間会社を休んでしまって。
これじゃ仕事になんねえ、まずいなぁ、俺は社会に出ても役に立たない人間かもなぁ……と、このときはかなり落ち込みました。
そんな思いを心の底に抱きつつ、次に川崎通信区に異動になったんです。そんなある日のことでした。川崎通信区の詰所で班の先輩たちと雑談をしている時、
「杉山くんはさ、何で仕事を頑張れるの?」
30代半ばの先輩に聞かれたんです。
「与えられた仕事なんで、真っ当にこなすのが自分の役目だと思っています」
そう答えたんですが、次の先輩に言葉が今も心に残っています。
「仕事を一生懸命にやるのは、みんなと仲良くなるためだよ」
「みんなと仲良くなるため……」
「仕事を一生懸命やっていると、誰かが手を貸してくれたり、あいつは頑張っているなと認めてくれたり、失敗した時もサポートしてくれたり。そういうことを通して人間関係を作ることなんだよ」
あの大雪の時だって、電車の運行を少しでも遅らせないように、みんなで力を合わせた。僕が会社に入って経験してきたことは、仲間を大切にし、仲間と力を合わせることだったんだと、この時改めて自覚したといいますか。川崎通信区に1年、次の配転先は金沢文庫電力区でした。