ユニークなのは、最初にハマったことばが「音符」であることだ。
「世界中の誰が見ても音符にはひとつの意味しかない。人工言語というのですがまさに理想でした。だからピアノを習ったんです」
そして8歳の頃、もうひとつの人工言語の代表「プログラミング言語」と出会う。きっかけはお父さん。もともと『iPad』を幼少期から持たせるなどITに積極的な家。「ことばが好きなら」とプログラミング教室を勧めると、のめり込んだ。
「コンピューターを通して人の思考を具体化できる。すごいなと思いました。この頃から発表する機会も増えて、『プレゼンも上手になりたい』という思いが強くなったんです」
そんな彼女のプレゼンづくりには2つのルールがある。
1つは「プレゼンシートをつくる前に付箋で流れを書き出すこと」。事前に、プレゼン内容の全体像がつかみとれるからだ。
2つ目が「事前にプレゼンを人に見せて、意見を聞いて何度も修正。壊しながら磨く」ことだ。
「父やプログラミング教室の方々の意見を聞き、何度も修正します。直せば直すほどよくなると思っていますから、抵抗もないです」
変化を恐れず、むしろ自分を伸ばしてくれるものだと信じる。彼女の根っこを形作ったのは、お父さんのこんな考えなのかもしれない。
「『世の中はすごいスピードで変わるんだよ』と肌で感じてもらいたいと考えています。新しいガジェットを触らせるのも、先進国から途上国まで海外に連れて行くのもそのため。私は映像制作の仕事をしているのですが、業界はITで仕事のやり方がガラリと変わった。その変化に対応できた人間だけが残りましたから……」
だからだろうか? 楓さんの柔らかな笑み、そして発言の節々から、激しい変化もいとわない「凛としたたくましさ」が感じられた。
ことばは、意思も宿すのだ。
様々なプログラムを書いてきたが、目下手がけているのは人の話す言葉をコンピューターに分析させる「自然言語処理」だという。
これまでつくったスマホアプリのプレゼンの様子。「プレゼンではあまり大げさな身ぶり手ぶりはしないほうですね。自分が目立つより、内容を伝えたいので」