◆村上隆「あんなこといいな 出来たらいいな」
(綿布、アクリル、金箔、プラチナ箔、アルミフレーム)
「彼の特徴でもあるスーパーフラットというべき平面的に画面を埋め尽くすモチーフが描かれている。藤子F先生の姿が描き込まれているので“ウォーリーを探せ”のような感覚で藤子F先生の姿を探してみて。2002年の出展作品『ぼくと弟とドラえもんとの夏休み』(キャンバス アクリル)も同時に展示されているので、旧作との比較も面白い」(山下教授)
◆鴻池朋子「しずかちゃんの洞窟(へや)」
(牛皮、毛皮、水性クレヨン)
山下教授「洞窟の雰囲気になっている作品。最近の鴻池さんは縄文人のようになっているね。アニミズム的なことに関心があって、自然、命の交換などがテーマになっている。狼は鴻池さんの一貫したモチーフ」
鴻池さん「ここ3~4年ほど表現することの手ごたえが紙では物足りなくなっていた。いろいろな素材を探すようになり出合ったのが皮素材。2年ほど前に神奈川県民ホールで大きな皮緞帳の作品を作ったときに、いつか使いたいと廃材で出た皮を取っておき、今回はそれを使用した。
最初にお話を伺ったとき、ドラえもんをあまり知らなくて、しずかちゃんぐらいしか思い浮かばなかった。しずかちゃんの部屋みたいなものを作れないかと思い浮かんだのがきっかけ。皮を縫ってその上に水性クレヨンで描いている。洞窟のような雰囲気で作ったが、部屋の中で描いているとリアリティがなく、思い立って東北の雪山で穴を掘って埋まりながらドラえもんの歌を歌った。大声で歌っていたので喉が締めつけられる感覚になって、低体温症になったのか手足が動かなくなる経験をしたことで、作品制作に手応えを感じるようになった。歌は空間を超えていくような強さがあることもわかった。最後にドラえもん~と叫んだが、ドラえもんは来てくれなかった(笑)。
注※こちらは映像作品「ドラえもんの歌 on 森吉山」と題し同時出展されている。
トナカイの毛皮は四次元ポケット。私の中でマテリアルはその作家が一番深いところ、直感的に素材を選び、つかみ取るものだと思っている。ポケットのモチーフを考えるときに手触りがあって起毛しているもので生々しさが欲しくなった。
狼は人間に身近な動物の犬から派生して、人間以外の身近な生き物ということから始まったモチーフ。食べる、噛むといった感覚を感じてもらいたいというときに、しずかちゃんのぷりっとした体を甘噛みしてみたいなという思いを表現した。しずかちゃんだけ目が開いていて、のび太、ジャイアン、スネ夫は目を閉じており、ドラえもんはカエルの卵になっている。みんな眠っている中でしずかちゃんだけは何かを見ようとしている。藤子先生の漫画を読むと、しずかちゃんに対してはすごく気を遣って描いているなと感じて、それがなぜなのか知りたかった」