『ナイトミュージアム』(原題: Night at the Museum)という映画では、夜になると博物館の展示物が命を得て動きだす。ところで、あえて夜にならなくても展示物が生きて動く所がある。それは、戦車の発祥地、イギリスにある戦車博物館である。
■戦車の安息場
数年前に映画『フューリー(Fury)』で、主演俳優のブラッド・ピットより注目を浴びたモノがある。それは、 第二次世界大戦時、主力戦車であったアメリカのシャーマンとドイツのタイガーだ。
劇中の戦車が、本物の戦車だったからだ。しかし、こんな稀少な戦車が一体どこから来たのだろうか? それは、ここ、ボービントン(Bovington)に位置した戦車博物館である。
戦車を世界で初めて作ったのはイギリスだが、戦車マニア達にとって人気が高いのは、断然ドイツ戦車であろう。 状況はこの博物館でも変わらない。 それにもかかわらず“世界最高”の戦車博物館というタイトルをイギリスが持っているという事実が意味深い。
博物館が位置するのはイギリス南西部のドーセット(Dorset)地方だ。ヨーロッパで最も大きく、人気あるという戦車博物館がこんな田舎にある理由は何だろうと思った。 もっと多くの人が訪れやすい、ロンドンの近くに位置するべきだと思うけれど……。
1916年、第一次世界大戦に投入されたイギリスの戦車が熾烈な戦闘の末に基地のボビントンに帰ってきた。 ほとんどは廃棄処分しなければならない状態だったが、 ここでイギリス人の“オタク”気質が発揮された。戦車の乗務員とエンジニアたちは、後世のため、一部の戦車を保存することにし、後にこのボービントンを訪問した、ひとりの作家の提案で博物館が設立された。
その後、第二次世界大戦を経て、展示物の数が飛躍的に増えた。1947年からは一般にも公開され、戦車の歴史(特にイギリスが作った世界初の戦車、マーク I)と興味深い見所、イベントを提供している。 今もボービントンと周辺の地域は、イギリス軍の主力を担う軍事地域として、機甲部隊と訓練所が集まっている。