■相手に心を開かせる論理~返報性の法則
相手を同調させたいときには、さらに知っておきたい法則がある。それは、自分の弱みや知られたくないことを相手に見せたり話したりすると、相手はそれに対して自分も何か大事なものを返さなければ申し訳ないと感じる「返報性の法則」である。これもイエス・セット話法と合わせて活用したい。
例
営業マン「うちのサービスはここが弱いんですが、これから改善し、より良いサービスを提供したいと考えています」
見込み客「そうなんですか。そこは弊社にとってそれほどデメリットではありません。もっと御社のサービスの詳しい内容をお聞かせ願えますか」
こうして自社の弱みを見せることで、何か腹を割って話されたような気がして、相手は「自分は信頼してもらっているんだ」と感じる。そこで、自分も信頼の証を返さなければならないと感じ、さらに話を聞いてくれようとしてくれたり、フォローしようとしてくれたりする。
営業の場合、最終的には成約につながる可能性もある。
●弱みを見せる返報性の法則の注意点
「ここだけの話ですが」などとわざとらしく連発すると逆効果になる。
●返報性法則の使い方アドバイス
今井さんは、営業の場面で使う方法を次のようにアドバイスする。
「営業の場面で使うときは、相手にとってデメリットにならないように、自社の弱点を伝えることが重要です。例えば、『フリーターを雇用したい』と考えている個人経営の居酒屋に、アルバイトの求人広告を提案するとします」(今井さん)
営業:このように、弊社の媒体には16歳~30代まで幅広い年齢層の登録者がいます。
店長:なるほど。すごいね。
営業:ありがとうございます。ただ・・・まだまだ高校生・学生の登録者数が少なくて、全体の8割が20歳以上のフリーターという状況です。実際に雇用に至った実績を見てみますと、ほぼフリーターという状況ですので、高校生や学生のご要望ですと、正直むずかしいです。また、人気のバイトの中でも、塾講師やコンビニなどはまだまだ弱いです。
店長:ふーん。じゃあ、逆にフリーターには強いってことでしょ?
それにうちは飲食だから問題ないですね。料金とか詳しく教えてください。
営業:ありがとうございます!
「このように、事前に相手の状況を調べたり、ヒアリングしたりした上で、相手にとってデメリットならない部分(=高校生・学生に弱い)や、特に関係のない部分(=塾講師やコンビニが弱い)で弱みを伝えましょう。
弱みを見せることで、信頼を勝ち取ることができます。また、上記のような場合ですと、逆に飲食とフリーターには強い、という印象を与えることもできるため、弱みを伝えているにもかかわらず、強いメリット訴求になっている、という一石二鳥の結果を得ることができるのです」
イエス・セット話法と返報性法則は営業の場面ではもちろん、普段の何気ない会話にも取り入れられる。わざとらしくならないよう、うまく取り入れてみたい。
取材協力
株式会社セレブリックス 今井 晶也さん
営業・販促に関する支援事業を行っている株式会社セレブリックスにて、営業コンサルタント兼主席エバンジェリストとして、これまで130を超える営業代行およびコンサルティングに従事。数多くの営業支援実績をもとに、現在では営業ノウハウを中心とした講演や執筆活動に従事。代表的な活動として【宣伝会議主催の営業関連講座】【キーマンズネットでの営業コラム】等がある。
https://www.eigyoh.com/
取材・文/石原亜香利