■藁焼きの道具
旬のカツオは刺身が一番という人が多いが、もちろんタタキにもこだわっている。皆さんもご存じのように高知のたたきは藁で焼く。藁には米と麦の2つがあり、主流は手に入りやすい米藁だが、初ガツオの時期はとくに香りのよさで麦藁を使う人もいる。
なぜ藁を使うのかは火力の大きさだ。乾燥した藁は茎の中が空洞なので、あっという間に火が燃え上がる。同時に独特の香ばしさがカツオに素晴らしい風味をまとわせる。
藁で焼くためカツオの表面は黒くすすけても、風味を大事にするためふき取るようなことはしない。たまに焦げていると避ける人を見るが、それはもったいないことと覚えておこう。
■産地ならではの歯ごたえも
高知にはカツオのおいしさを表現する言葉がいくつかある。代表的なのは「ぐび」や「びり」である。どちらも抜群の鮮度を誇っていることを指し、身がゴムのように弾力があり、薄く切らないと噛み切れないほどのものを指す。
なかなか出会うことがない逸品なので、筆者の場合は中土佐町で一度、そして同じく漁師町である土佐清水市の居酒屋で一度、「びり」に出会ったことがあるくらいだ。
下の画像は土佐清水市の時のものだが、薄切りなのにものすごい弾力と旨味。土佐清水ではこれを「びりびりのカツオ」と呼んでいた。同じ皿にのっていた清水サバの刺身に負けず劣らずの歯ごたえに、酒が進んだことはいうまでもない。
高知の戻りカツオは12月くらいまで。この秋、うまいものを食べたければ、ぜひ高知へ。とくに左党(お酒好き)の方には中土佐町がおすすめですぞ!
文・写真/西内義雄
医療・保健ジャーナリスト。専門は病気の予防などの保健分野。東京大学医療政策人材養成講座/東京大学公共政策大学院医療政策・教育ユニット、医療政策実践コミュニティ修了生。高知県観光特使。飛行機マニアでもある。JGC&SFC会員。