■公邸料理人に求められる訓練と従事する醍醐味
ただ料理を作るだけでなく、異国の地で、現地の食材をうまく取り入れながら、積極的に食べ手とコミュニケーションを取ってこそ、生きてくる。そんな公邸料理人として一人前になるには、どのような鍛錬が必要なのだろうか?長谷川氏はこう言う。
「一番は調理の基礎力です。そして、同時に、強い精神力も必要です。時には忍耐力も求められるでしょう。また、言語力、コミュニケーションの訓練も必要と考えます」
料理人としての腕前と精神面、コミュニケーション面と、さまざまな訓練が必要になる公邸料理人。我が日本を代表して、日本の心を映し出した料理をふるまうには、それだけの力量と精神が必要になるようだ。
そんな公邸料理人として従事する際に得られる、醍醐味はどこにあるのだろうか?
「一番の醍醐味は、やはり、自分が仕えている大使夫妻や客人に美味しいと言ってもらえたときではないでしょうか。また、色々な国に行くことができ、各国の文化や習慣を勉強することができることも、メリットの一つであると思います」
日本や和食を愛する心はもちろん、異国について興味関心を強く持ち、異文化に対して学習意欲を持っている人は、公邸料理人はまさに適した仕事といえそうだ。
長谷川 晃(はせがわ あきら)さん
辻調理師専門学校日本料理助教授。日本料理の教鞭をとる傍ら、テレビ「どっちの料理ショー」など制作に協力。第3回日本料理コンペティション優勝。2014年よりタイ・デュシタニカレッジにて講師を務め、公邸料理人育成事業の料理指導責任者を務める。http://www.tsujicho.com/
※写真提供:辻調理師専門学校
取材・文/石原亜香利
※記事内のデータ等については取材時のものです。