手入れが必要で重量もある昔ながらの鉄フライパンが、再び見直されているという。その理由と魅力に迫る!
熟練の職人がハンマーの角度や位置を微調整しながら叩き上げる。叩ける職人は社長を含め6名のみ!
◎日本で唯一! 手間暇かけて作るフライパン
手軽なテフロン加工のフライパンが家庭での主流ではあるが、ここ数年は重く、サビの心配もある鉄製を選ぶ人が増えている。日本で唯一、鉄打ち出しフライパンを製造する山田豊明社長に話を伺った。
「打ち出しとは、平らな鉄板をハンマーで打って徐々にカーブをつけ、フライパンの形に仕上げる加工法をいいます。鉄は叩くと鍛えられてプレス(型押し)より丈夫になり、軽量化にもつながります。さらに表面にできた微妙な凹凸により、食材に旨そうな焼き色がつけられる利点もあるんですよ」
おもしろいのは愛用するうちにフライパンに油がなじみ、使い勝手がよくなること。自分で育てた、このフライパンでしか出せない焼き色が出せるようになると、いやがおうにも愛着が増す。便利だが数年で買い替えが必要なテフロン加工とは真逆で、時とともに成長する道具といえるのだ。
山田工業所 社長
山田豊明さん
中華鍋とフライパンを中心に多様な金属加工品を手がける。大量生産の時代に逆らい、あえて手間のかかる打ち出し式を踏襲し続ける。
《職人技が光る!製造工程》
〈1〉鉄板を切る
厚さ、大きさを細かく指定してカット。鉄は黒皮鉄と同じ、サビにくいホット材を使用。
〈2〉打ち出し
巨大なハンマーで3000回、約15分かけて鉄板を叩く。形を決める肝心要の工程。
〈3〉へりあげ
打ち出し機で鉄板を挟んでへりの部分を立ち上げる。1枚1枚、丁寧に仕上げる。
〈4〉プレス
鉄板を型で押して、打ち出しのアール(角度)をゆるくし、商品の形を均一に整える。
〈5〉ならし
形がゆがんでいるものなどがあれば、さらに叩いて調整する仕上げの工程。
〈6〉取っ手を付ける
フライパンの角度に合うよう取っ手の接合部を1本ずつ、手で叩く。本体に付けて完成!