◆第一線で活躍するクリエイターとのコラボ製品
「トランスイート四季島」でも採用された、アジア人で初めてフェラーリをデザインした工業デザイナーの奥山氏とのコラボレーションは10年以上にわたる。山形出身の奥山氏と渡辺社長は高校の先輩と後輩の間柄で、「かっこいい山形を伝える」「山形のものづくりを元気にしたい」という共通の想いからコラボが始まった。
建築家の隈氏とのコラボでは「MORI」「KOKE」「ISHI」といった独特の世界観を持つ製品を展開。苔の質感を毛足の長さや糸の質感で表現した「KOKE」は海外からの評価も高いという。下記画像で、壁にかかっているものが、左から奥山氏の「UMI」「SAKURA」、隈氏の「KOKE」、床に敷かれているのが、左が「トランスイート四季島」仕様の奥山氏の「UMI」、右が隈氏の「MORI」。
さらに今年の新作では佐藤 可士和氏とコラボレーションを行い、宇宙をモチーフにした「TAIYO」が今秋デビューする。ブラック、レッド、ネイビーの3色で、同社の染色技術、ぼかしの技術を駆使した製品。140cm×200cmのマンションサイズと200cm×200cmの正方形の2サイズ。
「じゅうたんはダニがつきやすいと思われがちだが、普通に掃除機をかけてお使いになれば、むしろフローリングより安心してお使いいただける。また、木や石などの素材の流行でじゅうたん離れが言われたこともあったが、フラットな部屋の中でアクセントとなるラグは必要であり、玄関マットのように家の外と中を分けるものがあってもいい。石、木、畳との組み合わせともよく合うので、個人向けの山形緞通ではそのような提案をしている。
バブルがはじけ、リーマンショックがあり、じゅうたん業界はずっと下り坂にある。現在はオリンピックの特需があるが、機械をオペレートする技術者が不足して、オリンピック後を心配して人も増やせず、忙しくてもたくさん作れない状況だ。国民からも公の機関に高級なものを納めると税金で贅沢するなという批判の目で見られることもある。
わが社の場合はさらに東日本大震災の影響も加わり、どのようなものづくりをしていけばいいか迷うこともあった。震災のときは40名を切るほどの従業員で職人の高齢化もあったが、職人希望の女性がこの3年間で17名ほど入ってきている。工場では20代から、うちの会社で働いて59年という超ベテランの職人さんもいる。この工場ではそうした女性の職人たちがすべて手作業で作っているというのがコンセプト。手織じゅうたんは100年は持つ製品であり、品質は時間が証明してくれると思う」(渡辺社長)