■問題のある会社ではあった
確かにひどい会社はある。賃金や残業時間をはじめとした労働条件、上司など管理職層のレベル、会社の経営状態や前途などに大きな問題があると思える会社は存在する。しかし、そんな会社に入社したのはそれにふさわしいレベルであるからだ。もっとレベルの高い人材ならばわざわざ、入社はしない。退職後にも、そんな会社のことを口にしている人は自分がそのレベルの人材であったことをPRしているようなものだ。口にするほどに意識に残り、大きな存在となり、関係が切れなくなる。縁を切りたいならば、口にするべきではない。
■会社を心の中で突き放してみる
そのくらいに会社を突き放してとらえることは、職場で生きていくうえで必要なことだ。「会社が…」と未練がましく口にしている限り、会社中心の人生から抜け出せない。そもそもが、あなたを軽く扱った会社なのだ。あなたとの縁を切りたかったのは、会社なのだ。そんな会社を退職したのは、大正解なのだ。今後、どういう結果になろうとも、退職したことは間違っていない。今は現状に満たされないものがあるから、過去を振り返るのかもしれないが、やがて現在の仕事や私生活が忙しく、充実した日々になる。
会社のことを語る限り、会社が潜在意識として残る。消し去りたいならば、現在の生活に全力で取り組むことだ。転職先が見つかっていないならば、今の倍近くの会社にエントリーしてみよう。すでに新しい職場で働いている場合は少々の不満があったとしても、とりあえずは目の前の仕事をもっと素早く正確に処理しよう。もっと多くの量の仕事をしよう。こういう生活を1年も続けると、前職で不愉快だった経験はある程度は、意識から消えていく。退職した会社のことなど、実際のところ、どうでもいいことなのだ。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋