■反対意見が相次いだクラフト調パッケージ
カカオへのこだわりが伝わるよう、パッケージデザインも大幅に刷新することにした。特徴は、従来の板チョコレートでは一般的だった横意匠ではなく縦意匠としたことだ。
その狙いについて、「新しいチョコレートの世界をつくり上げていくため」と話すのは、菓子商品開発部 専任課長 スペシャリティチョコレート担当の山下舞子さん。つくり手のこだわりや顔、手の温もりが感じられることを意識して、全体をクラフト調にし、中心にこだわりのカカオの実をあしらった。
ただ、クラフト調が地味な上に、余計なキャッチコピーやシズルをなくしたため、社内では「何が入っているかがわからない」「このパッケージではダメだ」といった反対意見が多くあがった。しかし開発陣は、反対意見を押し切る。「パッケージは他にも候補がありましたが、ユーザーの声を集めた結果、圧倒的に人気があったのが今回のもの。この調査結果を元に、理解をしてもらいました」と宇都宮さんは明かす。
大胆なパッケージ変更は、結果的に成功した。発売後、SNSへの画像投稿が相次ぐ。それに、パッケージに影響を受けた創作物も目立った。InstagramをはじめとしたSNSには、パッケージを元にしてつくられたキーホルダーやノート、イヤリング、スマホケースなどの写真が数多くアップされている。
パッケージに影響を受けて創作されたノートやイヤリング、スマホケースなど。写真のものは、SNS上で公開された画像を元に明治が再現した
■複雑な模様に刻まれた意味
一方、パッケージの中も、従来の板チョコレートとはかなり雰囲気が異なる。まず、開けると小さな板チョコレートが3枚入っているが、その小さな板チョコレートにはスリットを縦横に入れ複雑な模様を刻んだ。複雑な模様にしたのは、チョコレートは口の中に入れる量や形によって味わい方が変化するという知見を生かしたことによる。
チョコレートに刻まれた複雑な模様。〈ベルベットミルク〉〈エレガントビター〉〈サニーミルク〉〈フランボワーズ〉〈ビビッドミルク〉に採用されている
また、一部のフレーバーについては、カカオの実を模様としてあしらった。これは香味を表現できる構造を採用した結果。「スリットを深く入れると香味がうまく表現できないものについては、代わりに表面に模様を入れることにしました」と山下さんは言う。