衝撃の“2階建て新幹線”が登場してから32年。人々に「憧れ」、「夢」、「ゆとり」を与え、ひとつの時代を築いたが、残念ながら2020年度限りでその雄姿が見納めとなる。それを惜しみ、歴代の2階建て新幹線を御紹介しよう。
☆JR東海・西日本編
(1)100系
■シンボル的存在の2階建て車両
国鉄時代の1985年3月、東海道・山陽新幹線用の新型車両100系が姿を現した。従来の0系に比べると、スタイリッシュなエクステリア、大幅にグレードアップされたインテリアのほか、8・9号車の2階建て車両に度肝を抜いた人も多いだろう。
2階建ての食堂車は、富士山を眺めやすい“特等席”といえよう。
8号車は食堂車で、1階を厨房や売店など、2階を客席に分けた。特に2階の窓は歴代の新幹線電車ではもっとも大きく、車窓から眺める雄大な景色がなによりの御馳走(ごちそう)。9号車はグリーン車で、眺望の劣る1階を個室(1~3人用。のちに4人用も新設)にして静かな空間を創出。眺望のいい2階を従来通りの座席とした。
当時の国鉄は台所事情が非常に厳しい中、「お客様第一の設計」などを基本方針とし、ゆとりを強調した100系はまさに“国鉄の最高傑作”。10月1日に東京―博多間の〈ひかり3・28号〉でデビューすると、乗客から好評を博したことは言うまでもない。