『物知りジジイの真実と虚栄』
実はこの銭湯に行った日が5月5日のこどもの日。こどもの日の風呂といえば、そうです、菖蒲湯でございます!
菖蒲湯ってオレあんまり入ったことないんですよ。子供の頃から家でもそんなことする風習なかったし、サウナ好きになってからは何回かサウナ施設で菖蒲湯に遭遇してるんだけど、まだ去年までは変な片意地張ってるトコがあって「サウナ好きは湯船には浸からない!」なんて思ってたんですよ。でももうそういう変な片意地から最近はスッと力が抜けてきましてね。逆に菖蒲湯ってどんなのか? すごい入ってみたかった!
当然ここの銭湯でもやってましたよ菖蒲湯。それも露天風呂の方でやってた。湯船入る前に、水風呂上がりの外気浴しながら、どんな感じか見てるとね、菖蒲の葉が10茎くらい荷造り用の紐でまとめられててね、それが広い露天風呂に13束くらいユラユラと水面に漂い浮かんでる。
で、そんな菖蒲の葉っぱを湯に入ってる皆さんはどうしてるかというと、予想としては、手に持ったり、なんか香り嗅いだりね、なにかしらリアクションするもんだとおもってたんだけど、皆さん特になんもしないのね。だから漂ってる菖蒲が、皆さんの股間の上あたりで留まってたりするのね。
それを外から眺めてると、股間を菖蒲でモザイク掛けてるみたいでね、それが妙におもしろい!!
サウナの2セット目と3セット目の間に、オレも菖蒲湯に使ってみた。他の人と同じように、水面とちょっとした流れに流されて菖蒲がオレの股間の上あたりに漂ってくる。すると、人間の身体の構造のせいなのか、股間の上は水の流れが泊まるらしく、股間の上で股間の露出を隠すかのように菖蒲がピタリと漂うのを止める。
せっかくなんで手に取って香り嗅いだ。シャープな香草に似たような香りでもするのかと思ったら、これがほぼ無臭! 湯船の離れた所で湯に使ってる初老の二人組も、菖蒲を手に取って香りについて話している。
「昔は菖蒲ってもっとニオイしたよなぁ」
「全然しないの? オレにも嗅がしてみ……あ〜しねェなぁ。あ〜これは菖蒲の種類が違うんだよ。昔はほら、ちゃんと池とかに生えてる菖蒲使ってたんだけど、これは地面で栽培してる“おか菖蒲”ってヤツなんだよ。だからなんも匂わねェの!」
「アンタ物知りだねェ」
「まぁな」
“おか菖蒲”が漢字が“丘菖蒲”なのか“岡菖蒲”なのか“陸菖蒲”なのかわからないが、家に帰ってから調べたところ、そんなもなァ〜この世に存在しなかった…。ちなみに菖蒲湯に使う“菖蒲”以外に、“菖蒲”とかいて“あやめ”と呼ぶ別種やら、“花菖蒲”と呼ばれるこれまた別種やら、あやめに似た花で“杜若(かきつばた)”なんてのはある。今回は以上!!
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。
■連載/カーツさとうの最強サウナ熱伝