■宿命から逃げることができる
多くの会社員は、何らかの不平がある。だが、辞めることができない。時間が経ち、年をとる。転職も難しくなる。結局、今の会社に残る。そして、若い社員に自分の武勇伝などを話し、大きく見せようとする。多くの会社員は、このような宿命を抱えて生きている。辞めていく人をけなすと、この悲しい性から解き放たれた解放感に浸ることができる。強いアルコールを飲むと、酔いが回り、とりあえずは、日々の不満を忘れることができるのと同じだ。
■社長や役員、管理職などが黙認する
社長や役員、管理職などは、退職者をバカにする社員を厳しく叱らない。誹謗・中傷を言っていても、黙認している場合が多い。それには、いくつもの理由がある。1つは、退職者はある意味での裏切りをしたからだ。「辞めていった彼は、立派」と称えてしまえば、退職者が増えていくかもしれない。むしろ、「うちの会社を辞めたところで、あいつは上手くはいかない」と言い、辞めることをためらうように仕向ける。こういう文化があるからこそ、退職者をバカにする社員は減らない。
■本当にダメな人材であった
バカにされる退職者は、本当にダメな人材であった可能性もある。例えば、遅刻が多く、仕事のスピードは遅い。上司の命令・指示も正確に理解できない。取引先やクライアントとの関係も悪化させるばかり。ところが、悪びれた様子がない。反省もしない。むしろ、居直りともとれる言動をとる。皆から浮きまくりとなり、孤立し、ひっそりと辞めていく。こういう社員はやはり、バカにされやすい。
会社を辞める人がいたら、その後を観察してほしい。「あの人はひどかった」「迷惑だった」「もっと早く辞めればよかったのに…」とバカにされる人がいたら、今回の記事を思い起こしてほしい。取り上げたいずれかの理由で、そのようになっているからだ。それを探ると、職場や会社の問題点なども見えてくるはずだ。退職者をバカにしたところで、その社員たちの前途が明るくなることはまずない。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋