【サラリーマン相談室】入社して15年経つのにいまだに下っ端の雑用係。転職したほうがいいですか?
——営繕係休憩室。それは、あなたの会社の中にある秘密の扉。会社の中で、あなた以外は誰も知らない秘密の部屋。悩んだら、いつでもおいで。悩みがなくても、遊びにおいで。さぁ、今日もひとりのサラリーマンがその扉のノブに、そっと手を伸ばしたようです。
【今週のサラリーマン相談】
入社して15年たちますが、私よりも下の後輩社員が配属されません。役職は副課長になったのに部署で一番の年少者なので、会議室の手配や弁当の注文、企画書のコピーなど雑用は全部私がやっています。大学の同級生はみんな、部下を何人も抱えているので、妻にもこの「万年下っ端」の恥ずかしい状況を話せていません。もっとやり甲斐がある会社に転職するべきでしょうか?
サラリーマン細山(入社15年目、39歳、出版社、東京都)
営繕のみつさん(以下、みつさん)「えーっと結論は、威張りたいってことでいいんだよね?」
サラリーマン細山(以下、細山)「いや、誰もそんなこと言っていません。下に後輩がこないので、雑用をする人がいなくて困っているという相談です」
みつさん「だから、威張りたいんでしょ、結局は。だってコピーするの、嫌いなの?」
細山「嫌いではないです」
みつさん「じゃあ、いいじゃん。嫌いじゃない仕事をたくさんやれてるんだから。コピー取りに、弁当の注文、会議室の予約。楽チンな仕事ばっかりじゃん。そんな恵まれた環境が嫌ってことは、やっぱりただ威張りたいってことでしょ?」
細山「いや、雑用は嫌いじゃないですけど、もうすぐ40歳なんだから、もっとやり甲斐がいのある仕事をしたいのです」
みつさん「やり甲斐なんて、自分で自分の仕事を肯定するためのただの言い訳なんだよ。だから、今ある仕事にやり甲斐を感じられない人は、結局どんな仕事に移ったってやり甲斐を見いだせないだろう」
細山「目の前の仕事に、やり甲斐を見いだせと? コピー取りにやり甲斐なんて見いだせないでしょ。価値がない」
みつさん「そうかな。
とある老舗の料亭に、高卒で入った人がいる。彼は20年間ずーっと料理を作らせてもらえなかった。包丁を握らせてもらえなかった。鍋さえ触らせてもらえなかった。来る日も来る日も、ただお米をとぐことだけが彼に許された唯一の仕事。
もう耐えられなくなったある日、料理長に言ったんだ。もっとやり甲斐がある仕事をやらせてほしいと」
細山「その彼の気持ち、とってもよくわかります。コピー取りなんて15年もやり続ける仕事じゃない」
みつさん「怒り心頭の彼に、料理長はやさしく言った。やり甲斐がある仕事ってのは何か? と。高卒の彼はすぐに答えた。『この料亭で一番重要な仕事がしたい!』と。
すると、料理長はこう言ったんだ。ここは日本料理店だ。この料亭で一番重要なのはお米の味だよ。今、君よりも上手にお米を炊ける料理人は、私を含めてもここにはいない。君にほかの仕事に移られたら、本気で困るんだけど? って。
本人がやり甲斐を感じていなかっただけで、実は一番重要な仕事をもうやらされていたんだよ」
細山「っう……。な、何かいい話じゃないですか。そうか、この俺がやっているこのコピーも……、コピーも……。
いや、騙されるところだった! やっぱり会社でコピーが一番重要な仕事なはずがない!! もっと、やり甲斐がある仕事がしたいんです!」