−−キーはペイントしているのですか?
大平氏:数字や四則計算、AC、Cなど使用頻度の高いキーは、金太郎飴のような2色成型になってます。ペイントや印刷だとどうしても、文字が消えてしまうことがあります。ですが、2色成型だと使っていく中でキーの表面が削れていっても文字が消えないんです。本体には5年間の保証が付きます。ヘビーユースされる方は毎日、ものすごい回数で計算されますが、その使用に耐えるという意味でも、性能劣化には極力対策を施しています。
宇都宮氏:裏側も見てもらえますか? ここは、滑らないように大型のストッパーを使っています。それからビスがなくなっているんです。というのも、埋め込み式の蓋で隠したからなんです。余計な蓋を増やしたくないので、ビスの個数も2か所に減らしました。そのため、ボディをスライドしてはめこむ方式に新設計しています。
宇都宮氏:3万円という金額は高級品の中では、高いとはいえない値段かもしれないです。世の中には5万円や10万円、そしてそれ以上の値段のモノも多いですから。でも、3万円が高いかどうかは別にして、不用意にビスが見えたりするのは“スキ”があると思うんです。それはダメだろうと思っています。
開発している段階では社内でも「本当に作るの?」って言われることも多かったです(笑)。機能にしてもデザインにしても、そんなに突き詰める必要はあるのか? って。電卓の3万円は高いんじゃないかと。そう思うのが自然ですよね。ただ、突き詰めれば、欲しいとする人は必ず出てくるんだと、今回の『S100』で思いました。
■3万円の電卓は高いか? 安いか?
機能やデザインの話しを聞いていると、何だかこの『S100』という電卓は特別なモデルに思えてくる。スキの無い工業製品は、やっぱり美しいし素晴らしい。
3万円を電卓にかけられる人は、多くないかもしれないけれど、これを買えば、同僚に、取引先に自慢できることは間違いない。それと、一度使うと手放せなくなるはず。
それにしても、3万円という価格。実に悩ましい。買えない値段じゃないけれど、“電卓に3万円”というのが贅沢なのも事実。あぁ、欲しい。できればプレゼントされたい…すっかり、カシオ計算機の“計算”にはまってしまったものだ。
文/中馬幹弘(ちゅうま・みきひろ)
慶應義塾大学卒業後、アメリカンカルチャー誌編集長、アパレルプレスを歴任。徳間書店にてモノ情報誌の編集を長年手掛けた。スマートフォンを黎明期より追い続けてきたため、最新の携帯電話事情に詳しい。ほかにもデジタル製品、クルマ、ファッション、ファイナンスなどの最新情報にも通じる。
※記事内のデータ等については取材時のものです。