■北島三郎さんの出演などイメージ戦略に長けた永谷園
ところで、永谷園と聞くと読者のみなさんはどんなイメージを持たれるだろうか? 商品を思い浮かべるのはもちろんだろうが、大相撲の懸賞、テレビCMなど、コマーシャルがとても上手な会社という感想を持たれる方もいるのではなかろうか?
このすし太郎もまた、強烈なインパクトで忘れることができないテレビCMがある。それは北島三郎さんのCMだ。
北島三郎さんは大ヒット曲「函館の女(ひと)」の替え歌で「は〜るばる来たぜさけ茶づけ」と熱唱。1970年に発売されたさけ茶づけは大ヒット商品になっていた。
その北島三郎さんが「すし太郎」のCMソングを2001年まで歌っていたのだ。「ち〜らし〜寿司なら、ちょいとすし太郎」という歌詞のCMソングを、当時の子供たちなら一度は歌ったことがあるはずだ。
現在も永谷園には巧みなコマーシャル制作が、伝統として息づいている。しかも、ユーモアがありながら嫌味な印象が一切ないのだから秀逸だ。すし太郎が爆発的に売れたのは、おいしいのはもちろん、このCMの力も大きかったことだろう。
■販売のピンチを常に抱えながらも、地道な努力で業界ナンバー1に復活
CM戦略以外でも、すし太郎が人気になった理由がある。それは少人数でもファミリーでも楽しめるからだ。すし太郎が発売されるまで、似たような商品はあったが、瓶詰めであったり、個別で少量の寿司を作るのは面倒だった。しかし、すし太郎は2人前がワンパックなので、ファミリー層だけではなく年配のご家庭、二人暮らしや一人暮らしの家庭でも愛用されたのだ。後に、お徳用として4人前タイプも登場、ファミリー層もがっちり味方につけて、その人気を不動のものにしていくのだった。
しかし、好事魔多し。お茶の間で大人気となったすし太郎は、順調に販売を続けていく……誰もがそう思っていた所に、ピンチというのは訪れるものだ。ライバルの出現である。
それまで圧倒的な数字でトップシェアを誇っていたすし太郎が、王座の地位から転落、2位に甘んじる屈辱を味わうこととなったのだ。
加えて、にぎり寿司がスーパーで販売されることが当たり前になるなど、消費者の嗜好も時代と共に変化した。すし太郎も変化が求められていたのだ。
そこで、永谷園ではひな祭りをはじめ、七夕、ハロウィンなどのパーティ需要や、きめ細かなリニューアル、新商品の投入などでマンネリ化を回避してきた。現在は、健康志向の下、従来の米酢に黒酢を加えた、主力の「すし太郎 黒酢入り」(298円 以下税抜き)に加えて、混ぜ込み梅ごまを加えるとカラフルな桃色になる「すし太郎 彩りちらし」(298円)、ご飯一杯分に合わせた分量の「お茶碗でもすし太郎」(130円)をラインナップしている。
さらに、10℃以下で冷蔵保存する“チルドタイプ”の第二弾「すし太郎プレミアムタイプ あなごちらし」(398円)も2016年11月から仲間入りしている。
チルドタイプのすし太郎は年配の愛好者の高級志向に合わせたもの。すし太郎の40年にも及ぶ長い歴史の中で初の冷蔵品は好評を博し、今後のさらなる展開も期待される。
加えて、パッケージデザインの変更や得意のCM戦略など、地道な努力を続けた結果、業界トップに復帰。ロングセラーの面目躍如を果たしたのだ。