5枚刃 ラムダッシュ ES-LV94(2013年)
ヒゲの濃さをシェーバー自らセンシングして、自動でパワーをコントロールする「ヒゲセンサー」機能も搭載。
−−このラムダッシュでは振動数が約1万4000にアップしました。
清水 振動数が上がれば、それだけヒゲをカットするチャンスが増えますので、その分、早く剃れるということになります。
−−スピードを上げるには電圧などを変えていくのですか。
清水 リニアモーターの場合はバネですね。高速で駆動させるのであればバネを強くして、遅く動かすのであれば弱いバネを使います。2004年から、それまで金属製だったバネを樹脂製に換えていますが、強度を上げようとするとサイズ大きくなったり、割れやすくもなるので、そのあたりの設計も簡単ではありませんでした。
右は2004年に開発された樹脂製のリニアモーター。左は前出の画期的に小型化された2002年バージョンだが、それよりも、さらに小型軽量化が図られている。
清水 そしてES-SV94では新たに「クイックスリット刃」を搭載しました。これは寝ている長めのヒゲに効果を発揮します。寝ている長めのヒゲは「くせヒゲリフト刃」に入らない場合もありましたが、「クイックスリット刃」でカットした後、さらに「くせヒゲリフト刃」でカットすることで、さらなる深剃りを実現できました。
このように単純に刃の数を増やすのではなく、それぞれに役割を持たせた刃を追加することで熟成を重ねてきた5枚刃ラムダッシュ。2015年発売のES-LV9Aでは、肌への負担を低減しながら密着性を高め、さらに深剃りを実現するという難題に挑戦した。
5枚刃 ラムダッシュ ES-LV9A(2015年)
「3Dアクティブサスペンション」「スムースローラー」といった新機能を搭載、メタル素材を多用したデザインも従来にない高級感を醸し出している。
清水 ES-LV9Aはヘッドに上下左右、そして前後に動く「3Dアクティブサスペンション」を採用して、肌への密着度が格段に向上しました。ただし、密着すればするほど、今度は肌との摩擦が大きくなります。この問題は刃だけではカバーできないので、新しい機構として「スムースローラー」を導入しました。ヘッドの大きさは変えずに密着性能を上げるという目標がありましたので、このサスペンションを完成させるまで7、8個は試作モデルを作りましたね。またES-LV9Aに関しては、密着性が求められるヘッドと、摩擦低減のローラーという相反する開発を1人で行なったのですが、今振り返ると1人で並行して考えることができたからこそ、上手くできたのかなと思います。
5枚刃 ラムダッシュ ES-LV9B(2016年)
そして2016年には、前後への可動域が約15%アップした改良型の3Dアクティブサスペンションを搭載したES-LV9Bが登場。刃面を肌に押し付けた際の圧力を分散させ、同時にスムースローラーの働きによって、肌への摩擦も約3分の2に低減させている。もちろんヘッドはフィニッシュ刃、クイックスリット刃、そしてくせヒゲリフト刃の5枚刃を搭載。かつてない肌への密着と圧倒的な深剃りを実現した、まさにフラッグシップモデルとなっている。
最後に清水さんの最も記憶に残るエピソードを教えていただいた。
清水 どのモデルにも思い入れがありますが、ひとつ上げるのであれば2004年の樹脂製リニアモーターですね。それまでは当たり前のように金属製のバネを使っていましたので、周囲からは耐久性と剛性という問題から「樹脂でできるわけがない」という声も聞こえてきましたから。
それを覆して完成できたこと。しかも金属製は溶接や連結の必要がありますが、樹脂はそれらの工程が不要のため、コンパクトにできるんです。ですから完成した時の達成感は大きいものがありました。
協力/パナソニック