■連載/ヒット商品開発秘話
多くの食を支えている小麦粉。しかし、家庭で使う場合、使い勝手に問題がなかったわけではなかった。このような中、多くの家庭で好評を博している小麦粉が、日清フーズの『日清 クッキングフラワー』である。
2015年2月に発売された『日清 クッキングフラワー』は、従来よりサラサラした薄力粉を小型ボトルに詰めたもの。ボトルには、少量使いに適したふり出し口と、計量スプーンでの使用に適したすり切り口の2つを設けた。容量は一人暮らしでも使いやすい150gと小容量で、小型ボトルのためキッチン周りに置いても邪魔にならないのも特徴だ。発売開始から2016年11月末までに、ボトルと詰め替え用を合わせて800万個以上の売上を達成した(インテージSRI調べ)。
■「小麦粉 少々」は省略される
『日清 クッキンフフラワー』が企画されたのは2011年秋。背景にあったのは、小麦粉市場の縮小であった。小麦粉は同社がトップシェアを持っていたものの、市場は人口減少などもありダウントレンドの傾向にあった。
「どうすれば、お客様にもっと小麦粉を使ってもらえるだろうか」――。『日清 クッキングフラワー』のマーケティングとプロモーションを担当した水田成保氏(加工食品事業部第一部営業グループ)は頭を悩ませていた。会社に寄せられた小麦粉に対する不満や要望を分析したり、お客様を集めたグループインタビューを実施するなどして、答を模索。この過程で注目したのが、「粉が舞う」「キッチンが汚れる」「水に溶けづらくダマになる」などといった使い勝手に関する不満。また、家庭用で主流の1kg入りは、普段あまり料理をしない人や単身世帯にとって、賞味期限が切れる前までに使い切ることが難しいことを思い知る。
そして水田氏は、グループインタビューのある結果に衝撃を受けた。それは、レシピに「小麦粉 少々」とある場合、「面倒くさいので省略する」という人が相当数いたこと。主流の1kg入りは普段、棚の奥など見えないところにしまわれることが多く、「小麦粉 少々」ぐらいであったらわざわざ出すのが面倒なので省略されてしまうというわけである。
グループインタビューでのこの結果をきっかけにして家庭での使い方を調べてみると、小麦粉を使う頻度が一番高かったのが、トンカツへの打ち粉だった。角度を変えていろいろ調査しても、打ち粉のような少量使いのニーズが高かった。少量使いは無視できないものになり、これまでほとんど着目してこなかった小容量に着目することになった。