■部下たちを分断させる
心理的な揺さぶりをかけて、部下たちに精神的に疲れるように仕向けてくる。疲弊した姿を見ると、上司は征服感を感じる。「俺は強い」と信じ込む。さらに揺さぶりをかけると、部下たちが一名岩にならなくなる。媚びる者もいるし、媚びない者もいる。これも、上司の狙いだ。部下たちが1つにならないようにしたいのだ。1つになり、束になり、自分に向かってくることを上司は怖がる。だからこそ、部下たちを分断する。そして、自分が優位な体制をつくる。
■支配したい
部下を無視することで、「上司に逆らったら、惨めな思いをするぞ!」と威嚇し、支配したいのだ。本来、部下以上の実績を残し、敬意を受ける人格になるべきなのだ。だが、そんな謙虚さも力もない。とにかく、部下を抑えつけたくて仕方がない。「部下であるお前たちは常に弱い存在なのだ」と洗脳しようとしているのだ。
こういう上司は、意外と出世が早い。大企業でいえば、本部長や役員レベルまで上がることも多々ある。社長になることは少ないかもしれないが、それなりに立派なところまで上がっていく傾向がある。このことは、日本の会社が、管理職に求めるのは「まずは実績」であり、「部下の育成」などは大きな功績にならないことを意味している。今、世間を騒がす大手広告会社・電通の問題なども、このあたりに一因があるのではないだろうか。
部下を育成する上司を会社として優遇していないから、部下をいいように使い、自分中心の体制をつくることしか意識にない管理職が次々と誕生する。なかなか議論されないが、実はもっと問題視されるべきことなのではないか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋