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最高時速370km、最大重力加速度10G!世界最速のモータースポーツ「アクロバットフライト」の世界

2016.11.29

■5Gを体感。そして高速スラローム体験

 心は完全に高揚していた。大丈夫、このフライト体験を楽しめる…そんな気分でいると、またまた課題を室屋選手が提供する。

「では、ループ(宙返り)します。加速の瞬間は5Gくらいになりますよ」

 機体は一時降下し、そこから急上昇で円を描くように宙返りをする。降下から上昇に切り替わるタイミングでGがかかる。5Gとは、体重が5倍になる感覚で、実際に体感すると頭からグリグリとシートへ強烈に押さえつけられているようだった。声なんか出せないし、血の気も失せる。楽しいことは楽しいが、ここまでくると体がついてこない。

「最後にエアレースと似た動きをしますね。地上のパイロンをすり抜けるイメージで、左右にスラロームします。はい、行きます!」

 室屋選手が参加する「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」は、地上15mを時速370km、10Gの世界で競技する。その疑似体験なので、恐らく切り返しの反応速度は1割にも満たないだろう。にもかかわらず、切り返す瞬間は体が左右に持って行かれるというよりは、横からひっぱたかれたかのような衝撃だ。

「バンッ、バンッ、バンッ…」

 切り返す度に叩かれる。痛い。

■フライト終了。足が震えて力が入らない。

 楽しくも厳しい、10分ほどのフライト体験も終了。着陸後に滑走路を抜けてエプロン(駐機施設)へと戻る。エンジンが停止し、機体も停止。コクピットを覆っていたキャノピーが開けられて無事帰還を果たした。シートベルトなどの安全装備を外してもらい、機体から地面へと降り立つが、足がガクガク震えてまともに立っていられない。楽しかったので心はウキウキしているけれど、体は悲鳴を上げているようだ。

 これで5Gレベル。レースでは10Gになるというのだから、想像を絶する世界だ。このような過酷な環境でも冷静に機体をコントロールし、世界中の猛者達と渡り合っている室屋選手のタフさに心服する。

 正直、吐き気もある。心もカラダも楽しむためには、並々ならぬ訓練を重ねなければいけないと思った。いや、訓練してもムリかもしれない。

 3次元のモータースポーツとは、実に過酷な世界だ。機体を降りた後、室屋選手を見る目は一変した。ひたすら尊敬の一念である。

■関連情報

http://www.redbullairrace.com/ja_JP

http://www.yoshi-muroya.jp/

http://www.ffa.or.jp/fsp/

http://www.breitling.co.jp/

文/中馬幹弘 写真/江藤義典

編集・ライター。アメリカンカルチャー誌編集、アパレルプレスを経た後、モノ雑誌に長く関わり携帯電話やデジタル製品、ファッションなどトレンド情報に明るい。証券会社勤務があり金融事情通でもある。

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